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菊田 最低限根拠となりうる読み書きの検査というのを、もう一度教えていただけますか?
河野 4つですね。「読み速度」、「書き速度」、「読み」「書き」の「正確さ」ですね。
菊田 そうすると、STRAW-RとURAWSSを組み合わせれば、それでいけると。
河野 そうです。
菊田 URAWSSは誰でも出来るんですね?
河野 そうです。だから「検査」という名前にしなかったんですよ。
菊田 なるほど。
それで、URAWSS-Homeでは解釈ができる機関に送ることになってると。
河野 自分でやっていただければデータはとれます。しかし数値の解釈が大事なわけで、それでURAWSS-Homeでは送っていただいて解釈を返送するということになります。
武井 学年の平均と比較する、という時、どれぐらい乖離していると支援が必要なんですか?
河野 統計学でいう標準偏差というのを使います。
武井 よく+−で表される数値ですか?
河野 そうです。データのばらつきを示す数値なんです。平均からの離れ具合を、標準偏差で表します。読み書きの場合、平均から1.5標準偏差以上、離れている場合ですね。知能検査の場合、2標準偏差以上離れているというのが、医学上の解釈なんです。平均から2標準偏差が離れていると、大幅に離れていると考えられますよ、となります。ではなぜ1.5にしたかというと、2にしてしまうと厳しすぎて、「この子も支援がいるよ」というのが抜けてしまうんです。
武井 これは0.1ずつ上がるんですか?あるいは、1.5の次は2になったりとか?
河野 いえ、計算なんです。1.6でも1.7でも計算できます。
菊田 URAWSSを測ると、その偏差の計算の方は……
河野 URAWSSは計算しなくても、表になっています。評価A、B、Cという風になっているんですよ。Aは標準偏差1以上ですね。Cが1.5を下回る場合。ではBは、1.5は下回ってないけど、標準偏差1までは届いてないよ、という場合です。困難とは言わないけど、かなり苦手ですよね、という。つまり、努力不足で困っているわけじゃない、ということです。
菊田 では、Bだともう支援が必要に?
河野 そうですね。統計学では、平均から1標準偏差の中に、全体の68%が入るんです。約7割が入るんですよ。だから+−1標準偏差以内だと、なんの問題もないと考えられるんです。1標準偏差を下回るということは、全体の7割に入ってないということになります。2標準偏差になると、2%なんですよ。
武井 いきなり、2%になっちゃうんですか?
河野 はい。1.5以下だと6%なんですよ。だから少なくとも全体の6%に読み書きの困難がある、という考え方ですね。STRAW-Rでも、URAWSSの1標準偏差以内,1標準偏差以下で1.5標準偏差以上,1.5標準偏差以下という判定表が採用されています。
菊田 じゃあURAWSSもSTRAW-Rも計算しなくて良いんですね!先生方もこれを取ることができると。
河野 そうです。STRAW-Rは、今は組織に所属している人でないと検査課題は購入できません。
菊田 だと、学校単位で買えるんですね。
河野 そうですね。
菊田 学校だけで支援の根拠を取ってあげることは可能っていうことですよね?
河野 S.E.N.S.(特別支援教育士)という資格を持たれている先生が取ってくだされば。その数値の見方だけ、ホームページとかで調べていただいて。もし分からなかったら河野に聞いてくだされば。
菊田 ありがとうございます、先生!
河野 さっきのRTIですが、よく学校の先生が、「知的な問題なのか、読み書きの問題なのかよく分からない」とおっしゃるんです。でも口頭で質疑応答をやってみれば良いんですよ。
菊田 なるほど!口頭で理解度を確かめるわけですね。
河野 文字を読んで文字で解答することは難しいけれど、口頭での質問に口頭で解答することはできるならば、読み書きに困難がある可能性はありますよね。あと教科によって差があるとかね。全般的に苦手となると、知的能力の問題もあると思いますが。でも算数や理科は得意だけど、国語だけダメだとか。となると、読み書きの可能性が高いです。ですから口頭で問題を出して、口で答えさせたら分かりますよ。もしそうであれば本人が楽な勉強法を一緒に考えてあげれば良いだけです。ただし,入試の時に根拠作りをするとなると検査は必要です。
菊田 そういう風に検査を使ってもらえば良いんですよね。
河野 はい。あとは周りを納得させる意味でも検査は有効です。
菊田 ご相談に見える会員さんの中には、知能検査で「知的なボーダーラインぐらいの値が出る」ということで悩まれる方がいます。それで、お子さんたちとお会いしておしゃべりをしたりしてみると、かなり難しいことまで理解されているご様子なんです。でも、知的のボーダーラインが出ると。それって、どういうことなんですか?
河野 知能検査には知識を問う問題とか、上位概念を出すような問題があるわけですよ。それって普段から考えるトレーニングをしていないとできないわけですよね。それで、読み書きが苦手で心が折れちゃった子達っていうのは、「考える」ということもしなくなってる場合があります。そうすると、年齢が上がると、結果として知能検査をやると低い数値が出る、ということはあるんです。あと知識が積み重なってないし。
武井 学校行ってないとか。
河野 そうですね、考えるトレーニングをしてないので。それで結果的に、年齢が上がれば上がるほど低い数値が出ます。知的障害特別支援学校の高等部の生徒に知能検査をした結果として、「知的障害」というレベルの数値が出ているけど、ひょっとすると元々は学習障害だったんじゃないかと、根拠はありませんが,私は疑っています。読み書き障害が原因でうまく学習が積み重ならなくて、結果として知的障害と同じような数字が知能検査では出ちゃっている。だから口頭で話をした場合、知的な問題を感じなかったり日常生活に何の問題もなかったりするわけですよ。
菊田 それは重大な問題ですよね。
河野 だからこそ早くから支援をやるのが重要なんです。
菊田 そうすると、特別支援学級なのか通常の学級なのかどうか、常にせめぎ合いな状態になります。お子さんの会話の能力を見ていると、やっぱり特別支援学級だと関わりが物足りないだろうと感じるお子さんがいらっしゃることもあって、そこはすごく問題な部分ですよね。
河野 知的な能力と読み書きの能力は別だ、という研究があるんです。知的には境界線の能力であって、読み書きの問題が全く無い方もいらっしゃるし、読み書きの問題のある方もいらっしゃる。そうすると、その後者の方は、知的能力が境界線だから読めない書けないのではなくて、もともと読み書きの困難を持っているから境界線の数値が出てしまっていると考えた方がいいのではないかと。だからそういう方には、読み書きの困難の支援していくべきですね。キーボードで打つとか、口頭で答えを言うとか。
菊田 それ、ものすごく大事で、そこは設置者である教育委員会がその認識を持っていないと、就学相談の段階で間違ったことになっちゃいますね。
河野 もう一つ知的障害の難しいところなんですけど、DSM-5という、精神科の医者が使う検査です、DSM-5になって、知的障害の重症度の判定項目から、数値の判断が消えたんです。数字だけでは重症度の判定はしないってことになってるんです。
菊田 そうなんですか。
河野 学習面とか社会面とか必要生活面とか、そういうものを全て総合した上で、重症度を判定することになってるんですよ。だから数字だけで診断するというのは、実はおかしいとなるんですけど。ただ、現実はそうなってないですね。ある程度の目安がないと判定しにくいので。
菊田 やっぱり、設置者には、気づきとか注意みたいなものが必要ですよね。
河野 境界線だから読み書き、というのはイコールじゃないんですよね。それも平谷こども発達クリニック【http://www.hiratani-c.jp/】のSTたちが何本か学会報告してますね。
菊田 どちらの場合であっても、境界線の子供達には特に注意が必要ということになりますよね。
そう考えると、先生方や設置者の担当者にはやはりある程度、検査の知識が必要ということにもなってきますね。実際、検査について知識を勉強したい、という方もいらっしゃると思うんです。そういう方向けのセミナーなんかを開催されるご予定やご意思はありますか?うちで企画させていただいて……
河野 協力しますよ!
菊田 本当ですか!
武井 あと、RTIの考えとかもぜひ教えていただきたいです。
河野 それと「検査がややこしい」と思っている方がいるんですが、実は30分で終わるんですよ!
菊田 30分!?
河野 ええ、30分ですよ。
菊田 通常級の先生方向けに講座ができたら良いなと考えているんですが。
河野 企画してくださるのならいくらでも。
菊田 ありがとうございます!是非やりたいです。真剣に考えさせてください!
そして、河野先生のシンポジウムが実現しました!
日時:3月7日(土)13:30~16:30
場所:明治大学 中野キャンパス 515教室
次回は、2月20日公開予定です。
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