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【小林輝明先生プロフィール】
菊田有祐くんが中学校の時の副校長先生。合理的配慮を導入した時のキーパーソン。
専門は理科教育。クリーンエネルギーとして注目されている燃料電池の教材化をテーマにして研究を重ね、世界で初めて授業で安全に簡単に実験できる燃料電池教材を開発。この教材は特許や実用新案等を取得せず、その成果を広く周知したことで中学校理科検定教科書に記載された。
結果として燃料電池が全国的に広く社会に認知されることにも繋がり、平成9年に理科教育のノーベル賞とも称される「東レ理科教育賞」を受賞。その他、理科教育への貢献が認められ、平成22年度には「第1回理科の達人先生」として表彰されました。JAXAの 教材開発委員として宇宙教育にも20年近く関わっています。勤務した学校は、幼稚園・小学校・中学校・スペイン日本人学校。管理職経験も経て現職は敬愛大学教育学部准教授。
菊田 先生には息子が中学入学の時からお世話になったんですよね。先生は当時息子の中学の副校長で。息子の配慮への道はあの入学式の、あのアナウンスの時から始まった。でも本当は、その前に一度偶然先生に会ったところから始まるんですよね。
小林 そう、その前。菊田君が中学に入学する前に、偶然一度会ったですよね。
中学校の校庭でね。日食の観測か何かしてたんじゃないかな。天体望遠鏡を出して。 珍しいんですよ。あぁやってグランドに出てやっていたのは。
菊田 そう。その時たまたま私が通りかかって。「息子もそういうの興味あるんです」って話をしたんですよね。それで、「ちょっと息子を連れてきていいですか?」って言って。「読み書きできないんですよ。でもこの中学に入りたいんです」っていう話をしたんですよね。そしたら小林先生が「読み書きできなくったって大丈夫」っておっしゃって。
小林 そうでしたね。「ノーベル科学賞を取る科学者は、ADHDとかそういうものを抱えているから、逆にどこかがグーンと伸びて、研究者として成功したりとかするんだから、全然気にしないでいいんだよ」って話をしたと思います。
菊田 そうそう。それで望遠鏡見せてもらって、一緒に天体観測したんです。
それで、入学式のあのアナウンスですよね。先生覚えてます?入学式の準備でPTAも職員室も大わらわのさなか。私もPTA役員として朝から準備に駆け回っていて。当然副校長の小林先生が一番忙しいわけです。それで先生は階段を駆け上がりながら振り返って、「あ、菊田さん、障害の件って別に内緒じゃないですよね?」っておっしゃって。私も走りながら「はい、内緒じゃないです!」って言ったら、入学式が始まる前の会場アナウンスで「この学校には聴覚に過敏な特性を持つお子さんが入学します。そのお子さんはヘッドホンをつけて入場します。ご了承ください。」と言って。笑。それで、新一年生の入場の列に混じって息子はノイズキャンセリングヘッドホンをつけて入場したんです。笑。来場していた保護者も来賓も生徒も、誰もクレームなんか言わなかったですよね。
小林 そうですね。それは最初が肝心だと思っていましたから。それに、その場で思い付きで言ったのではなくて、学年の方と事前に確認はしていたと思います。ただね、あまりよく覚えてないんですよ、申し訳ないんだけど。笑。自分の中では、そういう風に(配慮)するのが当たり前っていう感覚でいたからじゃないかな。でも入学式は私個人でできるものではないので、原稿通りの司会をしなくちゃいけないから、その場で内容を変えるとみんなも戸惑うわけなので、学年や校長と全部調整してあって、菊田さんにお伝えしたのが、入学式当日になったってことだと思います。だって、管理職がそのつもりでいても、教室に行った教員が入場の時に「ヘッドホンは教室に置いていきなさい」とか注意しちゃったらアウトだから。だからそこは、学校全体でそうするってことになっていたと思います。
菊田 学校って、段取りが肝心ですからね。
小林 その通りですね。その時は自分が副校長で、一番段取りができる立場だったから。巡り合わせっていうかね。
菊田 いやもう、あの出来事がのちの大学入学まで繋がっていく決定打だったと私は思うんです。
それで、その次の日に学年集会で、体育の高橋先生が「A組の菊田ね、この子ノートテイクにパソコン使うよ。誰か文句ある人?いないね?」って言ってくれて。
小林 それも良かったですね。そういう物腰でサクッと伝えて。それが当たり前っていうメッセージをね。表現はちょっとね、今どきだとちょっと「え?」っていう表現だったけど。笑。まあそんな感じで体育で学年主任の先生が宣言して、配慮が「当たり前」っていう空気を作って導入していく流れができたのは良かったですよね。
菊田 そう。「当たり前」っていう段取りをしてくださったので、周りの子ども達も「当たり前」と受け止めて。物事がうまくいくときには、キーパーソンが必要だと思います。
小林 後で考えるとね。あの時は私がキーパーソンとは思っていませんでしたが。
学校全体の場合は方針を決めるのが校長先生で、学年で言えば学年主任と、色々ポジションがありますけど、今回で言えば、僕がその立場だったと言うのが巡り合わせというか。私自身が「え?何で(ICTを使った配慮が)いけないんですか?当たり前じゃないですか。」という考えだったからうまくいったかもしれない。
これがまた、石橋を叩いても渡らず、引き返して来て、やめようみたいな人だったら難しかったかもしれませんね。「これをやったら何が起きるか?どうなるか?それはやっぱりやめておきましょう。」みたいな人が教育界には多いから。”前例がない”というその一言が、そういう人にとっては有効なんです。殺し文句になっちゃうんですね。笑。
教育界で言えば、そうでない先生が増えてほしいし、増やすためには若い時から、当たり前っていう感覚の人達を増やし、そういう人たちが管理職になっていく。管理職になってから考えを変えるっていうのは大変なので、若い人たちから変えていくということだと思いますね。教師、学校は重要だと思います。
菊田 「当たり前」って思える先生たちが、「当たり前」って思える生徒を育てていきますから。それが引いては社会を変えていくので。だから、社会の源は学校にあると思います。
小林 そうですね。いや本当、その通り。いいこと言うなぁ。
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次回は、8月1日公開です。
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