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あるよセレクト
2018.11.20
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#4【当事者】読み書きの配慮が叶える未来

人付き合いは得意じゃない。でも、
先生や友達の一言が心を軽くしてくれた

信じてくれる先生の存在

今の学校では配慮が行き届いているように感じますが、現在のような配慮の形をつくって くれたのは誰ですか? キーパーソンのような存在はいるのかな?

幸強  一人にしぼりにくいんですけど、校長先生です。受験のとき、ぼくの配慮への反対意見もあったそうですが、それを まとめてくれたのが校長先生でした。コーディネーターの先生をはじめ、中学校の先生方もいろいろ助けてくれました。今、高校で支援窓口になってくれている先生はいつもぼくのことを気にして くれているというか、よく見てくれている。ことばや態度でそれがわかります。

どの先生も、支援に対して前向きというか、「どうすればいいか教えて!」「支援につい て知りたい!」という感じで、いろいろ取り入れて新しいことをやっていこうとしてくれました。すごく感謝しています。

潤樹  ぼくにとってのキーパーソンは今の担任の先生です。その先生は、「潤樹のことは全然わかりません」って言うんです。でも、困ったことがあると、うまく気づいてうまく対応してくれる。だいたい、わかってない先生は「潤樹さんのことはすごくわかります」 って言って、しなくていいことまで勝手に進めてしまったりするんですけど(笑)、その先生は何かあると「わからないんだけど」と言ってぼくの考えを聞いてくれます。それで、 一緒に考えて一緒に解決してくれるんです。

いい先生と出会えてよかったですね。先生との関わりのなかで印象に残ったこと、うれし かったことはありますか?

潤樹 「潤樹の言ったことを嘘いつわりだとか考えたことはありません。安心してくださ い」って先生が言ってくれたことです。

ぼくは小学校では、1 日に何回かは泣いているか、先生に怒られているかでした。だか らいつもビクビクしていたし、学校が大っ嫌いでした。だけど、それじゃだめだから、中学校に入ったとき、ぼく自身が変わりたいと思ったんです。それで毎日きちんと登校して 授業を受け、部活もがんばりました。だけど…。どうしても小学校のときのことを思い出 してしまって。だんだんいろんなことがうまくいかなくなった。登校するのがつらくなっ て、先生に対しても「どうせわかってくれない」って思うようになってしまいました。

そんなとき、先生がそのことばをかけてくれたんです。

それは「不登校になるつもりはない」ってぼくが言ったことへのメッセージだったんで すけど、うれしかったです。その頃、ぼくは疲れ切ってぐらぐらだったのに、そんなぼくを信じてくれる先生がいることに驚きました。自分を認めてもらえたような気がして、す ごく楽になった。それで、先生を信じてみようと思ったんです。

罪悪感と孤独感

幸強くんは先生や周りの人に言われてうれしかったことばや、心に響いた出来事はありま すか?

幸強  1 年生のときのクラスの友達がみんなすごくやさしい人たちだったんです。理解 があるというか、ぼくの性格を無意識のうちに察して気遣ってくれました。困っているこ とがあれば気づいてくれるし、ぼくの罪悪感というか、孤独感みたいなものがあったりす るときは話しかけてくれたり。

なにかエピソードを聞かせてくれますか?

幸強 ちょっと長くなっちゃうんですけどいいですか? ぼくの学校では入学してすぐ応 援団の「対面式」と「応援歌練習」っていうのがあります。伝統的に「バンカラ」という か、ものすごく厳しい行事で、それで学校に来られなくなってしまう人もいるくらい。1 年生だけ整列させられて、「指先伸ばせ!」「顔上げろ!」ってすごい怒られるんです。も のすごい怒号が飛び交うんですが、その間、ずっと目をつぶらせられて。それが急に止ん だと思うと、シーンと静まりかえったところでいきなり太鼓がドーンッて鳴ったり。ぼく は聴覚過敏なので究極の恐怖なんです。

聴覚過敏で予期不安が苦手な人にとっては、耐えがたいシチュエーションですね。パニッ クを起こしかねないでしょう?

幸強 だから耳栓をつけて後ろの方にいたり、別室で待機したりしてました。ぼくは大丈 夫だと思ってたんですけど、先生や親が「無理なんじゃないか」って心配して。あまり記 憶にないんですが、小さい頃、大きな音でパニックになって逃げ出したりとかっていう黒歴史があったみたいで(笑)。

そういうときにクラスの友達が助けてくれたんですね。

幸強  事情を知らない他のクラスの子が、「あの子、なんで耳栓つけてるの?」ってなったときに、友達がぼくの代わりに説明してくれたりしました。だけど、本当に過酷な行 事なので、自分だけ参加しないというのはすごい罪悪感があるんです。申し訳ない、申し 訳ない、っていう気持ちであふれてました。それに、孤独感もありました。

配慮をしてもらうことに罪悪感や孤独感を感じる人は多いですよね。

幸強  最終日、苦しい練習を乗り切った後だからクラスが団結して、みんなわあわあ楽 しそうにしていて。だけど、ぼくはキツい練習をしていないので、みんなの中に入れない というか、この場にいちゃいけないような気がしてました。だから、誰にも気づかれない ように、教室の後ろでそっと見てたんです。

そうしたら友達が気づいて、「来なよ!」って声をかけてくれた。そして彼は応援団の 先輩に、「対面式の挨拶、幸強くんはやってないんで、今やっていいですか」って言ってくれました。それで、教壇に立って、対面式でみんながやったようにぼくも大声で叫びま した。

「1 年 D 組、○○中学校出身、山口幸強! よろしくお願いしますっ! オーッス!!」 そうしたらクラスのみんなも「オースッ!!」って言ってくれて。なんというか、クラス の一員になれた気がしました。ぼくだけやってないことにずっと罪悪感と孤独感があったんだけど、そんなぼくをみんなが受け入れてくれた。…あれは、忘れられない思い出です。

みんなにわかってもらえなくても

いい話をありがとう。配慮をしてもらっていると感謝の気持ちと同時に「悪いな」という 罪悪感や、「自分だけ」という孤独感を感じることがあると思います。幸強くんのクラス メートは自然な形でそれを和らげてくれたんですね。潤樹くんもそういう体験はあります か。

潤樹  ぼくの特性についてクラスで説明した後で、みんなが書いた感想文を読んだこと があります。「ずるい」とか「ひいきされてる」って書いている人もいたけど、「気にならない」とか「一緒にいて楽しい」って書いてくれる人もいました。

仲のいい友達はいたけど、もしかして無理して仲良くしてくれているのかな、って思ったこともあったので、うれしかった。全員にわかってもらえなくても、わかってくれる人 やわかってくれようとする人がいれば、そこから理解が広がるのかなって思いました。

もしも自分と同じように苦しんでいる子、悩んでいる子がいたら、どんなことばをかけてあげたいですか。

幸強 むずかしいな。ぼくはあまり気が利くタイプじゃないし、自信はないんですけど …。もしもぼくと同じような子が転校してきたら、自分が同じような立場だったときにか けてほしかったことばをその都度、言えたらいいな、と思います。罪悪感や孤独感を感じ ているときに何か言ってあげるとかじゃなくて、ただ一緒にいたり、ちょっとした時間に 他愛のない会話をするとか。それだけでも全然違うと思います。

 

甲斐 潤樹くん(14才)

潤樹 「みんなにわかってもらえなくても、わかってくれる人にちょっとずつわかって もらえたらいいんじゃない?」って言いたいです。「今と違う環境に行けばわかってくれ る人もいるんじゃない?」とも。

ぼくも学校に行きたくないときがあったけど、「学校へ来るだけで成長する」って先生 が言っていました。家で 1 日過ごすよりはるかに多くのことを経験するからだそうです。 人と人との関係をつくる力は経験することで身につけていくものだ、ということも教えて もらいました。だからぼくも、毎日毎日を繰り返すことで今までとは違う自分になれたら、 って思っています。

最後に、将来の夢を教えてください。

幸強  今まさにそれを考えなきゃいけないときなのに、勉強にいっぱいいっぱいでなかなか考えられずに今に至る、という感じです。でも、ぼくは生き物や動物が好きで、生きているものを観察したり助けたりしたいので、方向的には農学部に行きたいと思っていま す。例えば動物行動学の研究とか。あと、今の学力だとまだまだなんですが、動物を助け るという意味で獣医学とか獣医師を目指したいという気持ちもあります。

かっこいいですね! 潤樹くんは?

潤樹  海洋と生物と地学が好きなんですが、いちばん興味があるのは地震です。地震がど うやって起きるのかということを深く調べたいのと、生物によって予知できないか、って いうのが今、気になっています。実際にそういうことを研究している機関があって、そこ に就職したいと思ってます。

具体的ですね! ふたりとも目指すものがあるんですね。これからも実現に向けて進んで いってほしいと思います。夢は広がりますね。今日はありがとうございました。

 

[インタビューを終えて]

「とても大人になった。強くたくましくなった」。小さい頃の彼らを知るスタッフが言いました。多くの困難と向き合うなかで身につけたのでしょうか、潤樹くんと幸強くんからは同世代の子どもにはない「人間力」が感じられました。 インタビューのなかで彼らが繰り返し口にしたのは周囲への感謝です。「周りの人に助けてもらった」「配慮を受けられたのは周りの人のおかげ」。そんなことばが何度も出てき ました。人間関係は得意ではないはずなのに、他者への心遣いが自然にできていることに 驚かされました。

自分がつらいときも他者を気にかける、包み込むようなやさしさが彼らにはあります。 そのやさしさ故に苦しむこともあったにちがいありません。きっとこの先も、平坦な道の りばかりではないことでしょう。それでも、今のまっすぐな心のまま進んでいってほしい。 彼らの笑顔を見ながら、そんなことを思いました。

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