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配慮を受けられたから今がある 学校に行くことで見えてくることがある
潤樹くんは中学 2 年生、幸強くんは高校 2 年生。おふたりは今、学校でどのような配慮を 受けているのか教えてください。
潤樹ふだんの授業のときは、パソコン、スキャナー、プリンターの使用と、ワイヤレ スマイクロホンの使用。それから配布物の拡大と、ノイズキャンセリングヘッドホンの使 用。あと、疲れたときは別室に移動させてもらっています。
幸強 ぼくは、定期検査の 1.3 倍の時間延長と別室受験、提出物における期限の緩和で す。提出期限は教科によっても提出物によっても変わります。「期限を過ぎてもいいから 終わったら出してね」という場合もあるし、「今できているところまででいいよ」という ことでその場ですぐ提出する場合もあります。その都度その都度先生に聞きながらやって ますが、期限がとっくに過ぎていることもよくある(笑)。とにかく、柔軟に対応しても らっています。
配慮の内容には満足していますか?
潤樹 通常の授業は大丈夫です。でも、テストはもう少し…。今は拡大コピーとか別室受 験をさせてもらっているんですけど、問題によっては「読み上げ」をしてもらわないとわ からないことがあるので、それをお願いしたいって思っています。
幸強 もしできるとしたら、計算機の使用と代筆・代読を模試で認めてほしいです。それ から、今は 1.3 倍時間延長してもらっているんですが、これを 1.5 倍にしてもらえたらう れしいです。
ですが、さっき言った以外にもいろいろ配慮してもらっていて、例えば授業中に行われ る小テストでの配慮や、板書を ipad で撮影することも許可してもらっています。いろん な配慮をほぼ全教科でやってもらっているんですけど、一部、配慮をしてもらわない教科 もあります。
それはどうして?
幸強 新学期が始まってすぐ、先生がクラスメートに僕の障害や配慮のことについて説 明してくれたんです。そして、それは他のクラスの人にはもれないようにしてもらってい て。だから、他のクラスと一緒に授業を受ける教科では、配慮してもらっていません。で も、先生たちは「配慮が必要なときはいつでも言ってね」と言ってくれているので、ぼく が望めば可能ではあります。
ということは、幸強くんは今受けている配慮で足りているというか、満足しているんです ね。
幸強 100 %満足しているとは言えないんですが、先生方はできる限りの努力をしてくれ ているので。だからそこに関してはとても感謝しています。
学校でしか学べないこと
今まで配慮を受けてきて、自分のなかで何か変化はありましたか?
潤樹 パソコンを使えるようになって、自分のノートが読みやすくなりました。みんな と違うやり方だけど、みんなと同じように授業を受けられるようになったのがうれしかっ たです。
幸強くんはどうですか?
幸強 変わったかとか、影響したかと聞かれると、あまり実感はありません。もちろん成 績は配慮してもらわないより配慮してもらったほうが上がるんですけど、ぼく自身は何も 変わってなくて。ただ、みなさんにやってもらっているという感覚が強いです。
もし配慮がなかったらどうだろう?
幸強 やっぱり、がんばってもがんばってもできなかったと思う。成績も上がらなかっ たり。モチベーションも下がってやる気もでないんじゃないかな、と思います。それに、 今の高校にいられるも、中学校での配慮や受験のときにしてもらった配慮のおかげなので …。
潤樹 ぼくは勉強をしてなかったと思います。たぶん配慮があったから今、勉強できて いるだけで、なかったらできなかったと思います。
でも、勉強は好きでしょう?
潤樹 好きな教科はあるけど、あんまり好きじゃない(笑)。でも新しい知識を得られ るのは楽しいし、好きです。学校に行くと家では得られない知識が得られるじゃないです か。先生が実際に話してくれることを聞いてわかるから、本やネットでは絶対に味わえな い知識が得られる。それが楽しいです。
幸強くんはどうですか? 学校で学ぶというのはきみにとってはどんな感じ?
幸強 学校に行かないとなると予備校とかに行くんだと思うんですけど、そうしたらた ぶん勉強しないですね。家でやることも可能と言えば可能なんだけど、やっぱり学校は特 別な気がします。
小中学校は同じ地域の人たちが集められるけれど、高校は志が同じ人たちが集まってき ますよね。その人たちとの友達関係や、話したりコミュニケーションをとったりすること で刺激をもらえる。モチベーションが上がります。そういういことがとても大事だと思い ます。
いろいろな配慮のかたち
中学校や小学校と比べて今の学校はどうですか?
幸強 中学校は地域で分けられているのでいろんな人がいるわけです。柄の悪い生徒もた まにいたりとか(笑)。なんというか、ノイズみたいなのがありました。今、周りにいる のはぼくと同じようにこの学校を選んで受験で入った生徒たちなので、単純に平和でいい なあって感じます。
潤樹くんも小学校とは別の地域の中学校に通っているんですよね?
潤樹 小学校のことはあまり思い出さないようにしているんですけど(笑)。小学校の ときは学校に行きたくなかったです。勉強も、家でできるから学校には行かなくてもいい や、って思ってました。でも、今は、行って得られる知識があるから学校に行こうと思え る。そこがおっきな違いです。
幸強 ぼくはアーチェリー部に所属しているんですが、課題とか予習復習に時間を取ら れてしまって休部しているんです。というか、自由参加みたいな感じ。たまに練習に行く のですが、他の部員たちはぼくの事情を知らないけれど、「何か訳があって来られないん だな」というのを察してくれて、快く迎えてくれます。
今の学校は真面目で頭がいい人が多いんです。頭がいいというのは勉強ができるという ことだけじゃなくて、理解があるというか、心がいいというか。配慮っていうとパソコン の使用とか時間延長とかを思い浮かべるけれど、そうではなくて、思いやりというか、本 当の意味での配慮がぼくの周りには充実していて、すごく居やすい、通いやすい環境にな ってます。
「時間延長」や「用紙の拡大コピー」のような実践的な配慮とはちがう「心の配慮」が、 自然になされているんですね。でも、世の中にはなかなか理解してくれない人もいるでし ょう? そういう人たちにわかってもらうためにはどうしたらいいと思いますか?
幸強 そうですね。みんなに理解してもらうのは、ケースバイケースではあるけれど、難 しいと思うんです。先々、それが当たり前みたいに変わってくるかもしれないけれど、今 の時代はやっぱり難しい。だから、クラス全員に理解してもらう必要はないかな、ってぼ くは感じています。周りの人たちの中に、わかってくれる人が何人かいればいい。理解し てくれる人もいれば理解してくれない人もいる。そう思います。
潤樹 ぼくの場合は、入学したときに、ぼくが配慮を受けることについてみんなに話し てもらったんです。そうすると、わかってくれる人とわかってくれない人が絶対いるじゃ ないですか。だから、わからない人にはわかってもらえなくてもいい、って最初から思っ てました。でも、そういう形でずっとやってきたら、「この人はこういうなんだ」ってみ んな思ってくれるようになったみたいです。
読み書きが得意な人もいれば、ぼくみたいに読み書きは苦手だけど聞くこととか考え ることに集中できる人もいる。だから得意な分野で自分を生かせばいいのかな、って思い ます。
[スタッフから]
潤樹くんも幸強くんも、苦しい体験やつらい思いをたくさんしてきたそうです。でも、今、まっすぐに視線を向け、私たちの質問に真摯に答えてくれる2人からはそんな気配は 感じられません。素直で少しはにかみやの、ごくふつうの中学生であり高校生です。
その一方で、会話をしているとことばの端々に、同じ年頃の子どもたちはまだ持ち合わ せていないような温かさ、思慮深さがのぞきます。思いやりと洞察に満ちたことばにはっとさせられたことも。そんな姿を頼もしく思うと同時に、2人がこうしてこの場に立つま でに通ってきた険しい道のりが見えるような気がしました。
続きは11月20日公開です。
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