【お問い合わせ先】
一般社団法人読み書き配慮
〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4毎日新聞社早稲田別館5階
あるよ相談についてお問い合わせ
その他サービスのお問い合わせ
事例を教諭することの意味
2018年6月24日、文部科学省初等中等教育局 特別支援教育調査官 田中裕一様と、理事の武井が対談しました。特別支援のスペシャリストである田中様に、読み書きに困難を抱える子どもたちを取り巻く課題と支援のあり方についてお聞きしました。
武井 このたび代表の菊田とわたしで、LDソリューションに向けた配慮のデータベースを始めることになりました。
わたしたちには共通することがあって、二人とも「読み書きが極端に苦手な子ども」がいます。そんな特性をもっている子を一般的な教育環境で育てて行くのは、やはりたいへんな部分がありました。何 がたいへんかというと、何の見本もない、お手本もない、どうやって育てていいのかもわからない。で も本人は苦しんでいるし困っている。それなのに、どうしてあげたらいいのかわからない。そんなところから始まって、菊田も私も孤軍奮闘してきました。
手探りで子育てしていくなかで大きなネックとなったのが、情報がないということ。わたしたちの子 どもはICTを使った合理的配慮によって少しずつ解決策を見いだしてきたのですが、そうした事例を誰かの役に立てられないか、と考えたのです。配慮のデータを集めて共有できれば、同じようなことを困っている子たちに適用したり、そのデータからヒントを得て何かやってみるということができるのではないか。それで「配慮のデータベース」を共有するという形で事業を始めることになりました。
そんな思いで立ち上げた会社なのですが、この試みについて田中さんはどうお感じになりますか。
田中 すごく興味があります。今までもいろんな配慮が全国各地でなされてきましたが、それが共有されなかった。つまり、その地域のその事例に関わった人だけが知っている。そこから遠い人たちはたまたま教えてもらったり、偶然見つけなければ知ることができないという状態です。配慮の事例があっても全国的に共通のフォーマットとして共有されてきませんでした。
武井 共有されないと広がっていかないですよね。
田中 そのとおりです。人でも本でもネットでもいい、困ったときに「あの人に聞けばいい」、「あそこへ行けば情報がある」ということを知っているのはとても大事なんです。だから、情報がそろったデータベースがあって、それがネットにのっかっているというのは大きな意味があると思います。アクセスしやすいし多くの事例が載っているので、その子にあったものを選択したりヒントを得ることができる。 関西弁で言うと、「おもしろい」って話になるんです。
武井 学校や先生方が活用することもできますか?
田中 合理的配慮というのは、保護者や子どもから「困っているのでどうにかできませんか」という意思の表明があったときに行われるものとされています。だけど、本来、特別支援教育とか学校教育というのは、そう言われる前に学校側がちゃんと手立てを打たなくちゃいけないんです。教員の方が保護者に対して「こういう手立てがあるんだけれど必要ないですか」と聞くのが学校教育のあるべき姿なんじゃないかな、と僕は思うんですよ。だから、学校の先生には配慮の事例を知っておいてほしい。このデータベースは教員もしくは教育委員会が真っ先に見るべきものだと思います。
武井 息子の場合は、たまたま保護者である私が先に気がついて学校の先生に相談しました。読み書きがたいへんで、宿題も時間がかかってしまって…という話をしますと、先生は「いやいや、けっこう書 けているじゃないですか、大丈夫ですよ」とおっしゃる。やっぱり、配慮が必要な状況であることを気づきづらい、という問題はありますか。
田中 難しいとは思います。僕が特別支援学校の現場にいた感覚から言うと、本人ががんばってこの状態なのか、サボったためにこれぐらいなのか、なかなか判断はつきにくい。おうちの情報と学校の情報 をすりあわせて初めて、「この子はがんばっているけど、本領が発揮できてないのかもしれない」ということが見えてくる。
そして学校も、一担任の思いだけでなく他の先生たちからも情報を集めて話をすることが大切だと思 います。校内委員会とか学年会で共有し、担任の先生一人ではなくて学校全体で考える。そのときに配 慮のデータがたくさんあれば、「この子は、この事例に書いてあるこんなことが必要なお子さんと判断すべきでしょうか」、という話し合いがもたれる可能性があります。
もうひとつ付け加えると、やっぱり知らないことはやれないんです。学校だけではなく例えば会社で も、初めてのことをやろうとするときは勇気がいりますよね。知っている限りこんなことやった人はおらへん、となったらやりにくいじゃないですか。それがデータベースがあることで敷居が低くなる。「全 国にありますよ。それも1件じゃなくて10件も20件もあるんです」という話になると、心理的なハードル が下がりますよね。そういう意味でも、データベースで「こういうやり方がいっぱいあるよ」ということを知るというのは非常に重要なんです。
次回、Part2は9月20日up予定です
【お問い合わせ先】
一般社団法人読み書き配慮
〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4毎日新聞社早稲田別館5階
あるよ相談についてお問い合わせ
その他サービスのお問い合わせ