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菊田 もともとフトゥーロに来られたのは、書字の問題から?
内藤 はい。小3の9月に初めにいらっしゃった。
武井 その時から最初から、内藤先生だったのですか?
内藤 実際に定期的に通ってらっしゃったのは、中3の途中ぐらいまで。受験の前くらいまでかな。
菊田 教員免許を持っている方が、療育指導で関わるって本当にアリだと思うんですよね。
学習障害は特に。通級をもっと専門的にしたような感じだと思うので。学校を念頭に置いているのがすごくメリットかなと思って。子供たちの大半の生活は学校にあるので、大人が守ってあげるだけでは、学校では暮らしていけないってことがあって。感覚過敏にしろ、読み書きのことにしろ、自分でできる力を育てていく。その場所に合わせて凌いでいく力を自分の中に作っていってあげるっていうことがやっぱりすごく大事なことなので。療育指導に学校現場が分かる人がいるっていうのは、大事な視点かなって。
内藤 そうですね。学校に行けるんだったらね。
律くんには学校に「行かなくていいよ」って私は言っちゃったこともあるんです。さっきの話の中学の時。
菊田 私達もその子が壊れちゃうぐらいだったら行かなくていいと思っているんですよ。
内藤 うん。小学校の時は本人が行きたかったから、行けるようにしよう、がんばろうって。まあ、がんばるったって、そんなに頑張らなくていいからね、って、ずっと言い続けていたんですけど。ほどほどねって言いながら。
菊田 なるほど~。ほどほどって大事なところですよね。この子たちはゼロか100だから。笑。
内藤 この辺でいいんだっていうのが難しいので。灰色もいいよって言ったんですけど。なかなか難しいですよね。
菊田 真ん中を教えてもらうっていう、うちも療育で「中庸」を教えてもらうっていうのをずいぶんやりました。真ん中ぐらい。まあいいやっていうのを。教えてもらう。
内藤 がんばり表(※目標を2つくらい立てて、毎回指導開始時に確認して最後に振り返りをしてました。1つの目標につき、完璧だったらシール2枚、できた時もできない時もあったら1枚と設定してました)のシール1枚貼ることもあります。これがグレーのところ。できた時もあるし、できない時もあるし。できていた時間がちょっとあるんだからいいじゃんって。ゼロよりは1枚もらえて、先に進める方がいいでしょう?みたいな感じで。笑。
内藤 律くんは割と、淡々と自分と向き合うので。幼稚園の頃から。そうだったみたいですよ。
菊田 そうなんですか。淡々と向き合う?
内藤 教育委員会の就学相談に自分も同席して、支援級に行かせてくれと自分で主張して。
スコア的には全然通常級に入れるじゃないかっていうことだけど、「人数が多いから通常級は嫌です。無理です」って。幼稚園児の本人がそんだけ言うならってことで、支援級に入ってるんですよね。
菊田 すごいですね。ものすごい賢い。律くんが学校に求めるのは何か?っていうのを律君自身から聞いてみたいなと思って、シンポジウム動画を作成中なんです。うちの理事の田中裕一さんとLITALICOの野口晃菜さんとシンポジウムを。
学校に行かなかった小中時代があって、そして、高校に行ってみて、そして今大学の学びがあって。必ずしも学校が必要ではないけれど、学校には他で得られない学びがあるって律くんは言うんですけど、それをぜひ本人の口からシンポジウムで語ってほしいって思っていて。
内藤 律くんとは、もうここ何年も会ってないんですよね。律くんにとってはまあ、私が話を聞かなくても、他の人で済むようになったんだったら、その方がいいやと思っていて。大学のことは大学の先生に相談する。他の場所のことは他の場所の先生に相談するって住み分けられているんだったらそれでいいかなと思っています。私を使わなくて済むんだったらその方がいいよ。さよならとは言ってないけれど、また何かあったらおいでって言う感じで別れて。
菊田 へぇ。素敵ですよね、それ。「発達障害者の当事者研究」をされている熊谷晋一郎先生が依存先を増やせって、よくおっしゃっていて。自立って、ひとりになることではなくて、頼れる「誰か」や「何か」を増やしていくことだって。人って時間と共に関わる人が違っていって当たり前だから、そういう風になれたらしめたもんですよね。
内藤 そうですね。だから私は小さいときの役割をやったっていう感じで。成人したらまた、地域とか外へ。頼れる人を自分から引っ張てくる。なんとなく寄って来てくれる人が増えたっていうのは、律くんの力なのかな。って。
なんかね、変なこと言ってましたよ。3年周期だって言ってて。小学校1年生から3年生まではもう、大変だったんですよね。で、4,5,6年ってパソコンに詳しくて思い込みなしで向き合ってくれる熱心な先生に会って、学校でパソコンが使えるようになって、4,5,6の3年間は毎日学校に通えていたわけじゃないけど、楽しかったって。勉強できたし。で、中学3年間また大変で、高校3年間はよかったじゃないですか。だから3年周期だって。笑。
菊田 あははははは。
内藤 だから、このままいく大学は良くなくなるんだって。そんなわけないじゃんって言って。で浪人したからその3年周期神話はチャラになったでしょって言って。笑。
菊田 そっか。笑。
内藤 そう。1浪挟んだことで崩れた。笑。だからいいじゃんって。
あなたに興味をもって集まって来てくれたら、当然分かってくれる人もたくさんいるよ。普通に生活している人の中には、律くんはまったく理解できないっていう人もたくさんいるし、いくら説明しても分かってくれない人もたくさんいるけれど、「律くん」っていう人に興味を持って、向こうから勝手によってくる人たちもいるから、それを逃すなって。笑。
菊田 涙が出てきちゃった。その通りだと思う。なんか、親じゃない人がそこまで考えてくれるって、ありがたいよね。私、親だから、本当にそう考えてきたんですよ。その個人のね。
武井 親以外にね、そう思ってくれる人と出会えるかって、すごいその子の運命を左右するしね。
内藤 でも所詮、月に2回50分会うだけの関係なので、まあ、一日中付き合うわけじゃないし、50分勝負だから、それが長続きしていた理由でもあると思うんですね。
武井 でもその質が良かったってことなんですよね、時間じゃなくて。
菊田 何か、本当にね、一人じゃ育てきれない子たちだと思うんです。発達障害の子たちって、1人じゃとても育てきれない。色んな人たちがそうやって手を貸してくださればいいし、親も手放していいんだと思うんですよね。
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