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野中 受験については苦い思いがあります。受け入れてくれる高校を探して子どもと一緒に30以上の学校を訪ねました。そこで配慮について相談すると必ず言われたのが、「前例が欲しい」、「前例を持ってきてください」ということ。でも、受験の配慮の前例なんて個人レベルでは入手できないんですよね。
菊田 野中さんの翌年、うちも息子が受験で2年くらいかけて高校を回りました。で、相当な数を回った後で野中さんの訪問先リストを見せてもらったんです。そしたら、「同じところを回ってるじゃない!」って。
野中 驚きました。私が訪ねたのとほとんど同じ学校を次の年、菊田さんが回っている。担当者も同じ。うちは壊滅的な状態だったんだけど、それも同じ。
菊田 つまり1年前に同じことをした人がいたのに、それを知らなかったために全く同じことを繰り返していたわけです。全然進歩がない。先輩たちがすごい苦労をして1校、2校と拓いてきたのにその事例が共有されないから、毎年毎年、「前例を見せてくれたらやってあげる」って言われてしまう。
野中 「それなら自分たちで前例集めをしようよ」というのが、このデータベースのもともとの発想なんです。
菊田 周りの機関や発言力のある人に働きかけてみたけれど、結局、誰も動いてくれなくて。それなら自分たちでやった方が早いっていうんで、「私たちでやります!」って言っちゃった(笑)。
武井 かっこいい(笑)。親にとってはもちろんだけれど、学校や行政も、「似た前例がありますよ。◯◯市内ではこんな実例が何件ありますよね」とか、「全国でもこうした事例が増えてますよ」ということを提示されれば動きやすいですよね。
武井 うちも3年生になって、さあ、受験だ!ってなったときに、みなさんと同じように高校を回りました。夏休みには公立高校の説明会に通ったんですが、あるとき中学校の校長先生が事前に高校側へ電話をかけてくれたんです。そうしたら対応が全然違って。「今、中学校でやっている配慮の内容は全て受け継ぎます。受験に関しては県の管轄だから私たちからは何も言えないけれど、入った後のことは全部きちんとやりますから安心してください」そう言ってくれたんです。
野中 すばらしいですね!
武井 でしょう? 親としては「もうこの学校にお願いしよう」というくらいの気持ちになったわけです。でも、そこがなかなかうまくいかないところなんだけれど、本人が、「僕が行くのはここじゃない」って。「受け入れてくれる学校」が「行きたい学校」ではなかったんです。
一同 ああ…。
武井 考えてみれば当然のことなんだけれど、学校は「配慮があるから行く」のではなくて、「行きたいから行く」ところなんですよね。本来ならどこの高校を受験してもその子にあった配慮がなされるべきで、配慮の有る無しで選ぶっていうのは間違っていると思う。ですが、現実はまだまだそこまで行き着いていないというのを感じました。
野中 うちは受験の時にものすごい数の学校を回ってほとんど全滅だったんですが、そのなかに配慮してもいいですよ、と言ってくれた学校が2,3校だけあったんです。でも、たまたま海外への転勤が決まり、息子も「もう日本の高校には行かないで向こうでチャレンジしようかな」ということになりました。それで、配慮を受け入れてくれた学校にお礼状を書いたんです。そうしたらどの学校の先生も、「今年は可能性を拓くことができなかったけれど、お話を聞いて、こういう子がいることを初めて知ることができた」というようなことを言ってくださった。「今回は無理だったけれど、いずれは受け入れていく方向になるでしょう」とおっしゃってくれた先生もいました。
菊田 その翌年、私が高校を回ったときもあまり状況は変わっていませんでした。でも、ある高校を初めて訪ねたとき、担当の先生がハッとした顔をされたんです。それはきっと、野中さんが1年前に同じ話をしているから。先生にしてみたら、「また来た!」。「同じような子がやっぱりいるんだ」という感じだったんだと思います。結局、その高校へは行かなかったのですが、先生方は本気で向きあってくださった。
野中 その後、菊田さんのお子さんが別の高校で配慮してもらえたことを聞いたとき、息子が言ったんです。「自分の行動は無駄にはならなかった」って。「自分は行きたい高校に行けなかったし、配慮も実現しなかったけれど、こういう形で僕の行動が次につなげられるんだ。それが希望だ」そう感じてくれたことが私にとってはすごくうれしくて。だから、「配慮の事例を集めたデータベースがあったらいいんじゃない?」って菊田さんが言ったとき、真っ先に賛同しました。「自分たちの行動を無駄にしないためにもこの経験を次の人に生かさなくては。それが私たちにできることだ」って思ったんです。
武井 私たち保護者は、自分たちが苦労してやってきたことはどんどん開示して役立ててもらいたい、という気持ちでいるんですよね。
菊田 そう。それをステップに次のステップがある。私も先輩の情報を使わせてもらって次のステップがあった。だから、私の情報も誰かに使ってもらって次のステップにしてほしい。ここからジャンプしてもらいたいんです。
次回「設立の思い Part2」に続きます
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