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深見 中学校の話の中で、中学校の1年、2年、3年と、配慮する事項が彼の場合は減っていってたっていうんですね。まわりの環境に適応していくということで、だんだんだんだん、配慮を外していくことができると。だから、高校入試の時は、中学3年生の時にやっていた配慮よりも、ご家族はわりと細かな配慮を求めてきました。恐らくそれは、(入試が)未知の環境で、テストに集中しづらいだろうと予想されていたというところで、入試は”最大限の配慮”ということだったと思います。だけど、日常生活がはじまる中で、先ほど言ったように、自分で説明をしたり、学年主任を中心とした理解者が増えたことで、おそらくその集団に適応していく部分においては、わりと早期――むしろこちらが予想していたより早く適応しているんじゃないかと思います。
菊田 おっしゃるように、親の印象では、受け入れてもらえない環境にいると、とてもたくさん防御が必要になっていく。受け入れてもらっている状況がだんだんしっくりくるごとに、防御が少しずつ外れていくっていう印象を持っています。だからきっと甲斐さんが入試に当たって、色々配慮を求められたのは、「新しい環境の中で、後戻りをしても当然だろう」と考えられたんだろうと思います。で、予想より早く外れていっているのは、受け入れが非常にいいので、防御が早くに外れていって、彼が安心している状況なんだろうなと思います。
武井 本来の力を発揮できるようになってきているっていうことですよね。
西山 入学直後に保護者とお話した時には、「本人が不安なことがあった時に、“誰”に“何”を聞いたらいいのかを、明示してやってほしい」ということを言われたので、この事はこの先生、この事はこの先生、誰に聞いていいか分からなかったら学年主任、ということにしましょうとお約束をしたんですね。それで本人も困ったら、この事だったらこの先生に聞こうっていうのが、ちゃんとわかっていて。「困ったら、相談すれば大丈夫」っていうのが多分あると思うんです。だから、逆に言うと、最初は不安がすごくあったんだと思いますが、甲斐君の方から聞いてくれるんですよ、「これってこうですか?」って。こちらからも声を掛けますけれども、本人が聞いてくれるので、その両方で慣れていってる部分も、もしかしたらあるかもしれないです。
菊田 さっき先生方がお子さんの明るい表情とか生き生きと活躍する姿を目にすることによって、先生方の方が子供に慣れていくというお話が出てきましたけれども、まさに子供たちもそうで、聞いて答えてもらえる、聞けば聞くほど受け止めてもらえるということの経験が、彼らの内面を強くしていくような印象を、私たちは感じています。雛が孵化するときに、卵の殻を外側から親鳥が、内側から雛が突くことを“啐啄”っていうそうですけど、そういう感じですよね。
菊田 具体的な担任の割り振りは、どうされていますか?西山先生が学年主任になられたっていうのは、たまたまですか?
深見 まあ、たまたまです。笑。もちろんその合理的配慮に対応できるっていうことも含めて、学年全体の子供たちを導ける力、包容力のある教員を学年主任にと管理職としては考えるんです。彼女の場合は、去年一年生の担任なので、本来であれば、二年生の担任っていうところなんですけれども、先ほどの教員としての力量を考えれば、もう一度一年生で、一年の学年主任をお願いをした。甲斐君の件だけではなく、すべての面で、ってことです。
菊田 包括的に考えてそういうことだった、ということですね。そうすると、教科担任との連携とか取りまとめも、西山先生がなさる感じでしょうか。
西山 今までも2回授業担当者会議を開いているんですけれども、一番最初はとにかく先生たちに知っていただきたいこと、保護者からのお願い、中学校からの聞き取り、本人と話をして得た情報など、まず早々に授業を担当する先生方にお伝えをします。それで、本人とも約束をして、「テストに対する配慮とかはまだ足りていないところもあるかもしれないから、一度テストを受けてから話しをしましょう」と言っていて、(中間考査がなかったので)一学期期末考査が終わった後にもう一回面談をしました。実際に試験の配慮を受けてみてどうだったかという話を聞いて、その聞き取りから、さきほど教頭が言ったとおり、大学入試センターへ問い合わせたり、またその方向性が決まったり、本人がまだ困っていることを改めて先生方にお伝えするというか。
例えば拡大が、慌てて作ったものだと、写っていないことがあったりして。そういったトラブルや、例えばフォントなんかも、センター試験ではゴシックまで対応しているので、うちの学校でも対応可能であればやってみましょうとか。まず配慮をやってみて、また本人や保護者と話をして、それでまた担当者で共有して・・・みたいな感じで少しずつアップデートするみたいな。そんな感じでやっています。
菊田 話し合いながら進化しているんですね。
西山 はい、例えば元データの表とか図がちょっとごちゃごちゃしていたり、カラーを白黒印刷して、それをさらに拡大して、ってすると、解像度が下がったりとか、見づらくなってしまう時はどうしてもあって・・・。それをまた1から作り直す時間はなかったりとか、そんな時には「申し訳ないけれども」ということで、対応ができない所もあるので、「ごめんね」って話をしながら・・・。「でも対応できるところはしていこう」っていう感じで、やっていっているというか。
本人に聞くと結構図表とかも、読み取りがしづらかったりとか、国語とかも横列詰めてなくても、棒線とか記号があるとちょっと見づらくなったりとか、思ったよりも見え方の問題があって。どういう形がいいかなって考えて。授業プリントなんかはなるべくパッと見て、分かるようにしたいんですけど、試験に関してはやっぱりその、センター試験で対応してもらえるところを限界としてやるという感じです。本校で出来ることを万全でして、本番ではその対応をしてもらえないっていうのが一番困ると思うので、だからその既成の図表を使おうとか、そういうところは、結構本人が我慢しているところもあるんだろうなって感じています。なんかこう、すべてうまくいくっていうのは難しいなっていう。
菊田 段々慣れていくということも、あるいは必要なのかもしれませんね。
岩手大学の農学部に今年進学された私たちの仲間がいるんですけれども、その子が言うには、なかなか配慮は、”自分にフィットしたもの”になるって難しいんだけれども、どうしたら良い配慮になるか一緒に考えてくれていることこそが配慮、その過程こそが配慮なんだっていう風におっしゃっています。つまり配慮は結果じゃないと。いろいろな事例を見て思うのは、「一緒に考えてくれる人がいるという実感」が子供たちの内面の成長に繋がっているっていうか。彼らの人格形成に大きく寄与している感じがしています。
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次回は、4月15日会員限定公開です。
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