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菊田 その中で、一つ「評価」っていう問題は、温度差の大きいところなんじゃないのかなって思うんですけど、甲斐君の評価については、そういう温度差みたいなことはあったでしょうか。
西山 本人の努力が適正に形に表れるために、配慮を一緒に考えて取り組んでいっているので、評価に関しては、本人の出来もそうですけど。評価の段階で何かっていう形ではなく、評価に行きつくまでに本人が努力できるように、力を発揮できるために必要な配慮は何か?という話をしていっています。
深見 評価に至るまでの、勉強して力をつけていくっていうプロセスの段階で必要なことを、みんなでできるだけ同じようにできる、というところが力点ですよね。
菊田 本来の本質的な学びの在り方っていうか、そんな感じが本当にします。わりと紋切り型に「評価できませんから」「評価できないので、配慮できません」っていう風に断られてしまうケースも多いので、その考え方とはまったく逆のアプローチっていうことですね。
「本当の学びはなにか」とか、「じゃあそこに至るまでの配慮は何か」っていうことを考えられているということですから。積み上げていく方向が、真逆なんだなという風に思います。
深見 はい。だからその、この間も学年主任から相談があって、結局、彼が大学入試を受けるというところで、センター試験――今度共通テストになりますけども、その”入試でやってもらえる配慮”というものに、こちらの配慮も合わせていかなければならないということで、入試センターに問い合わせをして、入試の時は時間をどれほど延長してもらえるのか、とか、学校でやっていても入試ではできないとか、入試ではできるのに学校ではやっていないっていうのを、なるべく学年主任は作りたくないというのがあって、結局その情報が入ってからは、別室だけではなくて、時間も1.3倍延長ですね、そういう形でやっています。なので、つまり勉強してそれを発揮するという部分で不公平ではない、という部分ですよね。
菊田 はい。そうなんです。合理的配慮って、まだ始まったばかりの制度なので、大学入試センターの方がむしろ遅れているという風に我々は捉えていまして、1.3倍っていうのはもともと弱視の方の延長時間が1.3倍だったので、一律に1.3倍っていう風になっているようなんですけど、本来LDの子どもたちの時間延長っていうのは個々の状態によるはずですので、今後、それは揺れ動いてくるんじゃないかなっていう風に考えています。
これから甲斐君が受ける時までには、まだ私達もがんばって変えていきたいなと思っているところです。できるだけ本人と先生方の普段の努力の形が入試に繋がっていく、そのままの形で入試が受けられるという形に持っていけたらな。と私共は思っているところです。
菊田 入試の話を続けますが、中学校からは詳しくお伝えがあったということですね。まわりのお子さんへの落とし込みっていうのはどういった形だったんでしょうか。
西山 これは、担任が本人と話をして、「どうしますか?」と聞いて、本人が「みんなの前で説明をしたいです」と言ったので、最初の自己紹介の時に、自分から「みんなと一緒に勉強するためにこういうことが必要です」ってことをみんなの前で言っているので、まわりの子たちは、「ああそうなんだ」という形で受け入れています。
菊田 彼はノイキャン付けていますか?
西山 授業中につける事はもうほとんどないですね。テストのときに必要だったら、くらいです。
菊田 私が小学校3年の時に彼に会ったときは、うちの子が5年生で彼が3年生だったんですけど、全国から20人くらいの子どもが東大の先端技術センターというところに集まったんですけど、その時に一番小さかったのが甲斐君で、その次がうちの息子でした。2人とも音の問題で教室に入ることができなくて、バスタオルをかぶって、ちっちゃくなって。でも聞き耳は立ててるんですよね。本当は興味があって、教室の中のことを聞きたいから。でも音が怖くて中に入ることができなくて、それで外に座っていました。
その時に、インセントっていう、先生がマイクでしゃべるとその音が耳のところに補聴器みたいに飛んでくるっていう機械を付けてくれたんですね。そしたら、教室の中で何が起こっているかを聞くことができるんです。そうすると、だんだん慣れて、顔が上がって、二人とも1時間くらいして教室の中に入れたっていう経験があるんですけど。本当は集団の中で学びたいのに、いろんなことが怖くって学べなかったというところがあるので。そうやって大きくなったな、と思いますよね。今はノイキャンも付けないで大丈夫になったんだな〜って。
西山 中学校までは割と少人数で、高校に入ってはじめて40人のクラスを経験しているっていうことになります。ノイキャンは持ってきていたみたいなんですけど。普段から付けることはなくて、教室でするペア学習をしている中でも、普通にお隣さんとお話したりしています。
菊田 だんだん、そうやって周囲の理解のもとでできることが増えていくんだな、と思いました。
うちも同じですけれど、親も一緒に経験していっている感じです。
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