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一般社団法人読み書き配慮
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菊田 律さんは理学部数理科学科の1年生としてこの春から大学に通われていますが、入試や
大学での生活についてお話を伺えたらと思います。でもその前に、まずは大学を志したのはい
つですか、というところから始めましょうか。小学校や中学校時代、そして高校入試、高校入
学までをあっさり話していただければ。
律くん はい。あっさり話せるかどうかあやしいけれど(笑)。「大学に行こう」って言った
のは小学校2年生の頃です。
菊田 その頃は学校に行けてました?
律くん 一応。支援級ですけど。
光さん 支援級に在籍はしていたんですが、授業はしていただけなかったんです。字が書けな
かったんですけど算数は方程式なんかもできたので、「もう教えることはありません」と先生
がおっしゃって。小学校1、2年生ぐらいのときには、もう小学校には何のために行くのかわか
らない、みたいな感じでした。
律くん つまり、計算ができて、読むのも過剰なくらいできて、後は字を書くくらいしか教え
ることがないのに、「字は書けない」なんて言われたらもう教えることはない。学校は読み書
きそろばんを教えるところなんだから、という論理です。
菊田 そんな感じで小学校の6年間を? 何のための支援級なんだろうって思いますね。中学
校に進学されてからはどうされたんですか?
光さん 「支援級に在籍しないなら配慮は一切しません」ということだったので、パソコンを
得るために支援級在籍を決めました。律はパソコンを取り上げられると勉強も何もできないの
で。
菊田 パソコンはいつ頃から導入されたんですか?
光さん 字が書けないっていうのがはっきりしたのが小学2年生頃でした。3年生の頃には「書
けないなら打てばいいんじゃないの?」って。マリー・アントワネットみたいに(笑)。
菊田 「パンがないならケーキを食べたら?」(笑)。
律くん 父親の仕事の関係で家にパソコン、Macが大量にある環境だったので。
光さん 実は父親も書くのがあまり得意じゃなくて(笑)。
菊田 ああ、そうだったんですね。じゃあ、そこは全くハードルはなかったんですね。「おれ
も書けないぞ、書けないやつはいるぞ」、と。
光さん そう。「書けなくてもおれ、仕事してるし」って(笑)。
菊田 わあ、すばらしい!
光さん 今は書くことがほとんどないから仕事するにも問題ないし、打てればいいんじゃない
?って。「字を書けてもキーボード使えないやつは使えないぞ」、みたいな(笑)。
菊田 私もそう思います(笑)。それでMacを使って中学も支援級に? 情緒の支援級ですか
?
光さん そうですね。でも、行ってないんですよ、在籍だけしていました。
菊田 なるほど。いつ頃から行かなくなったんですか?
律くん 1年生の1学期の半分くらい行ったころだっけ?
光さん 5月の連休のときにわたしが校長室に呼び出されまして、「学校に来ないでください
」って言われました。授業を受けさせられないから家で通信教育で勉強してくださいって。
菊田 どうして?
光さん 理由を聞いたんですけど、「いや、できません。学校で勉強はさせられません」とい
うお答えだけで。ただ、「高校に行きたいということなので高校入試については手伝いはしま
す」って言われました。
菊田 そうなんですか!
律くん なので、高校の入試は一応、配慮申請ができました。
光さん 学校にしてみれば中学生で高校浪人はさせられない。けれど、本人は固く県立高校を
希望していて他を受ける気は無いと言っている。でも、現場の先生はそういう障害を持つ子ど
もに学習の支援はできないということだったんでしょう。
律くん つまり、特別支援学級の先生には養護学校に進学させるノウハウしかない。そもそも
専科の先生が支援学級には揃っていない。故に勉強は教えられない、ということです。
菊田 それで自宅学習をしてください、というわけですか。
光さん 定期試験のときだけは学校に行ってパソコンでテストを受けました。
菊田 だから成績がついた、と。
律くん 成績はつきません。普段は出席ゼロですから。
菊田 出席ゼロだから斜線ですか?
光さん そうですね。支援級なので成績も一般の成績表とは違って「試験を受けました」とい
う文言が書かれたものです。
菊田 なるほど。それで県立高校を受験されたんですね?
律くん 内申点ゼロの枠があるので申請をして。
菊田 ああ、ありますね。当日のテストだけで、後は当日のテストの出来を反映させた内申を
高校がつくるっていう受け方ですよね。
光さん そうです。「中学校からの内申は一応あるんですけど見ないでください」っていう内
申ゼロの枠があって。「50%見てください」とか「1年生のときだけ見てください」とか、い
ろいろあるんですけど、それを「100%見ないでください」っていう形でお願いして受験しま
した。
菊田 高校の支援はどうでしたか?
律くん 高校ではいろいろとしていただきました。
光さん 「これができないが、どう支援するか」という試行錯誤を3年間、積み上げていった感じです。
これは中学同様ですが、テストのとき何かできなかったら何を代替するか、ですね。
例えば、式が書けないときにはどうするか、とか。
律くん 連立方程式の大きい中括弧なんか、今は書き方を知りましたけど、中学当時はまだ知
らなかったので。
光さん ふつうのワープロだとそういう形では計算ができないので、高校入試では「連立方程
式はこのような形で出しますから、これを連立方程式として見てください」という配慮申請を
しました。
菊田 その連立方程式の書き方っていうのは自分で編み出した書き方なんですか?
律くん まあ、それっぽく見える書き方です。
光さん あと、例えば字が書けない律の場合、途中計算が存在しないんです。
菊田 存在しないですよね。わかります。
光さん だから、入試では「途中計算は見ないでください」とか。そういう配慮申請をしまし
た。
律くん 別室受験も高校入試のときからお願いしています。
光さん パソコンとプリンターをセットするため、ふつうの教室でやるのは他の受験者にも影
響があるので。「別室受験で」、「大きい机で」とか、そういうのは中学だけでなく高校側も
入って教育委員会の方と一緒につくってくださって配慮申請という形で出しました。
律くん 面接についても、「制服を着られない」、「服装に関するチェックはなし」、「姿勢
に関するチェック、目線に関するチェックもなし」というふうに。
光さん 面接は5人とか6人でいっぺんにする形式だったんですけど、それもひとりにしてもら
いまいした。聴覚過敏なので、誰に聞いてるか、誰が聞いているか、区別できないんです。例
えば私に聞いている質問に答えちゃうかもしれない。高校入試では、そういう危険がないよう
に配慮をお願いしました。
律くん で、受かりまして、合格発表当日に母が高校に呼び出されました。
光さん いきなり高校の管理職の先生から「これから入学後の配慮の話をしましょう」って言
われて。「今までの配慮申請書を見せていただいた上で、こういうふうな配慮をうちは考えま
したので、時間がないしイエスかノーかだけで答えてください」って(笑)。「これでいいで
すか?」、「こういう理解なんですけど間違いはないですか?」。そんな感じで年度内に配慮
の形ができて、4月からスタートしました。
律くん 高校に入学する前から僕を支援してくれるチームが組まれていて、各教科の先生と担
任、副担任、そして、その人たちをつなぐハブ的な役割の先生を配置してくださいました。ま
ず最初はその先生とメールでやりとりしながら、あとでお互い慣れてきたら専科の先生とも直
接やりとりしながら、それぞれの授業と先生のやり方にあった配慮の形をひとつひとつ、つく
っていったんです。
菊田 やっぱりコーディネータ的な機能を果たす先生がいらしたんですね。
光さん その先生は2年で異動されましたが次の先生がバトンタッチしてくださって、その先
生が大学受験の対応をしてくださいました。
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…続きは、3月20日公開予定です。
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