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現場の先生に知ってほしい
武井 前回もお話に出ましたが、宇野先生が監修された発達性ディスレクシアについてのビデオを見せていただきました。たいへんよくつくられていて、あまりご存知ない方でも一度ご覧いただくと「発達性ディスレクシア」についての理解が深まるように思いました。このビデオはどういった経緯で作成されたのか教えてください。
宇野先生 このビデオは文部科学省の委託研究事業を受けたときにその資金で作成したのですが、二つの目的がありました。
ひとつは、発達性ディスレクシアに関して、発達障害を専門にしている大学教員の先生方もあまり知らない。だけど、今後教師になる人たち(学生)に対して、教えないわけにはいきません。でも、発達性ディスレクシアの講義ができる先生が非常に少ないので、このビデオを活用してもらおうということです。大学の授業の中で発達性ディスレクシアについて講義をするときにこのビデオを使ってもらったらありがたいなと。
武井 教員の養成ということですか?
宇野先生 そうです。教員になる学生はもちろんですが、ふつうの授業の中で使ってもらってもいいな、と思います。
目的の二つめは、現場の教員の研修ですね。小学校、中学校の現場の先生方に発達性ディスレクシアの子がいるということをわかってもらわなくちゃいけない。そして、その子たちがどういう状態なのかを知ってもらわないといけない。ビデオを15分間という短めの時間にしたのは、教員は忙しいので15分ぐらいしか集中して見る時間がない、というのを聞いたからなんです。
武井 先生方に合わせて設定されたんですね。
宇野先生 はい。ただ、この10年ぐらいの間に発達性ディスレクシアに対する間違った考えがいろいろ出てきました。発達性ディスレクシア研究会のHPにも「これは正しいですよ」「これは違いますよ」というファクトシートを載せているのですが、本当は3本めのビデオを作ってもいいんじゃないかな、って思っているんです(笑)。
菊田 1編目が「発達性ディスレクシアについて」、2編目が「どう向き合いますか?ディスレクシア(支援編)」となってますね。
宇野先生 3編目は、学校で先生方が発達性ディスレクシアの子に、例えば漢字の宿題を半分にするとか、電子手帳を持ってきていい、とする場合に、他の生徒たちにどう説明するのか、そんな内容を取り上げられたら面白いですね。だいたいシナリオはあるんです。
武井 先生、それすごくいいですね! 私もほしいです。今、現状では、その説明は当事者か親がしていることが多いんですよ。
宇野先生 先生も当事者もご家族も、いろんな方がいらっしゃる。だから、便利じゃないかと思ったんです。
武井 ビデオというのがすごくいいな、と思います。実は親もよくわからないことが多くて、これを見ることで気づきにつながるのではないかと感じました。
心に残る出会い
宇野先生 20年くらい前だったか、テレビの「アンビリバボー」っていう番組で発達性読み書き障害を取り上げたときに監修をしたことがあります。それでちょっとだけ、1分ぐらい出演したんですけれど、その放送を見た人の息子さんが僕のところに来たんです。
大人の方で、小中学校でつまずいた結果、暴力団も新興宗教も両方を経験してきた人だった。発達性読み書き障害があるということがわかったのですが、その方のお父さんにしてみれば急に発達性ディスレクシアと言われても、そりゃピンとこないですよね。お母さんと一緒に僕のところに2回くらい説明を求めに来られました。とても厳格な感じで、必ず背広を着て聞きにいらした。息子さんにもかなり厳しく当たっていたんですよ。
でも、僕の話を聞くうちに、息子さんが20年間勉強しなかった、その訳がわかったっていうのかな。つまり、怠けていたから勉強しなかったわけではなかったってわかった。息子さんはそのとき27だったんですけど、「知らないこととは言え、お前に辛く当たっていて悪かった」ってお父さんがおっしゃったんです。そうしたら息子さんも、「ずっと反抗的な態度を取って、こっちも悪かった」って。
その様子をそばで見ていて、歴史的な父子の和解に貢献できたかなあって。僕がこの仕事をしていて、いちばんうれしかった瞬間です。専門家として、この仕事をしていてよかったなあって思いました。
菊田 お話を聞いただけで胸がいっぱいになります。涙が出ちゃう。
武井 必死に探して先生のところにいらしたんですね、その方は。
宇野先生 最初、本人は、「俺は障害者じゃないよ」って無視したそうです。でも2年後に何かの新聞に僕の名前が載ったときにお母さんがまた連絡してこられた。「息子が行くって言ってます」って。
読み書きにつまずきがあったとしても、そのつまずきを補って社会に羽ばたいていく力を育ててあげられる。
菊田 そうですよね。そこに人生がかかっている。
私たちは、読み書きができるようになるということを求めているのではなくて、人間として確かな育ち、豊かな育ちを応援したい。読み書き配慮は困難を抱える人たちの、そういうところを応援したいと思っているんです。
宇野先生 僕たちは支援もそうですけれど、専門家として、症状を見極めるとか、その先の指導だとか、やり方を変えることで貢献したい。失敗の多かった子たちが読み書きを習得していくことで、成功の経験を失敗の経験に上書きできる。それによって少しでも元気にさせたい。もともと考える力もあって判断をする力もあって行動もできる子たちなんだから、元気にしてあげたいと思います。
菊田 全くその通りです。新学習指導要領が謳う思考力、判断力、表現力、学びに向かう力の涵養、人間性。そういうことををしっかり担保してあげることによって自己肯定感をつけてあげたい。そして、元気に社会に送り出してあげたいな、って思います。
ディスレクシアの子どもには、一体どのような指導をしたらいいのか、について実践的な内容を動画でご覧いただけます。
先生方必見です! どうぞお見逃しなく!!
<内容>
・授業の進め方
・宿題の対処の仕方
・テストの実施の仕方
★前回のあるよセレクト『発達性ディスレクシアとの向き合い方』はこちらからご覧いただけます★
次回公開のあるよセレクトは、8月20日公開予定です。
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