【お問い合わせ先】
一般社団法人読み書き配慮
〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4毎日新聞社早稲田別館5階
あるよ相談についてお問い合わせ
その他サービスのお問い合わせ
菊田 今年、合意的配慮を受けて高校受験をされた、中嶋くんのお母さんにお話を伺いたいと思います。中嶋さんは、以前にも私たちのインタビューに答えてくださったことがあって、それは小学校と中学校における配慮についてでした。そのお子さんが今回、高校入試を受けられたので、もう一度インタビューをお願いしました。
菊田 中嶋さん、高校入試を終えて率直な感想を一言を。まず、お母様の感想から。どうでした?
中嶋 実際、合意的配慮をやったことがある学校は、交渉も楽だな、と思いました。
菊田 過去に合理的配慮実施の経験がある学校とは交渉も楽と。
中嶋 そうそう。過去に合理的配慮を実施した経験があって、「なんだ、(合理的配慮って)こんな簡単なことだったのか」って分かっている人にお願いするのと、「えっ、合理的配慮ってどういうことですか?」と返す人に説明するのとでは、全然違いました。
実際には、本命校以外にも相談に行きました。全部で私立が2校、公立が3校。
高校を訪問して受験の相談をした際に、「合理的配慮の実施についてはどうですかね?」という話をすると、「そんなことはちょっと経験ないし、実施は無いと思いますよ」と。「入試の段階になったら、事前にもう一回来てください」と言われてがっかり。そんなことを、中2頃からしていました。
ただ本命校は、合理的配慮実施の経験があって、「あ、そうなんですか」と聞く耳を持ってくれた。
菊田 たとえその高校で合理的配慮の経験がなくても、よその学校に実施の事例がある、ということが分かれば、「どんな話ですか?」と聞く耳を持ってくれると思う?
中嶋 そう思います。興味はあるんですよ、私が相談に行った高校は。よその学校の事例を話すと、「どういう視点で、それが許可されたんですか?」ということをすごい聞かれました。ほとんどの学校は入試で実施された事例があるということを知らないんじゃないかなあ。でも、学校が事例を知っておくのは大事なことだと思います。学校は、知らないから、怖いだけであって。
菊田 話を戻しますが、本命校はどうでした?
中嶋 本命校(公立)には中1から配慮の打診をしてて。中1の時に、私公立の合同学校説明会があって。本命校のブースに行って「うちの息子、理数系が好きなので、ここの学校に合うと思うんです。だけど、実はこういう読み書き困難がありまして…」と伝えたんです。すると、「お母さん大丈夫ですよ、うちの学校では、入試で合理的配慮実施して入学した子がいるから。頑張ってくださいね」と言ってくれたんです。学校側から教えてくれたんですよ。合同説明会の、相談窓口にいた先生が、「記述式に替えて選択問題で」って、過去の入試配慮の内容まで教えてくれました
菊田 すごいですね!
中嶋 たまたまその本命校に通うLDのお子さんと、知り合いのツテで知り合うことができて。それで「今はどんな配慮受けているんですか?」と聞いたら、「こういう感じで配慮受けてるよ」、と教えてくれた。
で、中学校に戻って、息子が理数系に力を入れる高校に行きたいことは中学の校長先生も知っていたから、「実は第一志望の公立高校には、こういう事例で入学した子がいて、今はこんな配慮をしてるんですよ」って伝えたんです。だから、先に知ったのは、高校の方の事例なんです。
菊田 中学で配慮が整うより先に、志望校で入試も入学後も配慮があるってことがわかったと。
中嶋 そう。それでさっきの本命校で配慮を受けているという人に、「いつから定期テストをPCで受ける配慮を始めたの?」って聞いたら、「中二の段階ではテストもPCで受けていた」という話を聞いて。じゃあ、その人と同じように段階をたどれば、息子も本命校での配慮の可能性が上がるかな?と考えたの。担任や校長も中嶋くんに合うと思っていた本命校が そういう流れならぜひ(配慮)しましょう。って考えだったから。ただ、今ひとつその状況を他の教員から理解してもらって賛同を得るのが厳しいと感じて。そのために、実際の事例のもっと詳しい情報が必要だと思ったの。「他の生徒の感情などどんな問題が起こるのだろう」「いや起きないのか?」とか。起きたとしても対応方法を知っておけば良いと。
そこから、菊田さんの息子さんの話になるんだけど。菊田くんの定期テストの様子がテレビに出たときに各教科担任全員にテレビの紹介をしていたから、配慮の様子は先生方に見てもらった。でももっと具体的に、菊田くんの詳しい情報が聞きたかった。(配慮を)やっているかどうかではなくどんな行程や問題をクリアして行ったかという情報が必要だったのよ。それで、菊田くんに「中学でこういう準備をしているんだけど、配慮の実施に向けて学校を説得するために、あと一歩が欲しいんだよね。」と聞いた。
菊田 なるほど。定期テストをPCで受けられるようになった背景を、中嶋くんの中学校に知ってもらうことが、中嶋くんが自分の学校でPCでテストの配慮を受けられるきっかけになったということね。
中嶋 だから、あるよストーリーバンクや、あるよセレクトなんかで、配慮に至るまでの行程を載せている「読み書き配慮」の情報公開って、必要だと思うの。
入試もそう。例えば再申請。私立は再申請を出せた事例があるって聞いたの。でも、再申請について、公立高校にも、担任も校長先生にも、聞いてみたけど、「出し直し(再申請)はない」って言われたの。だから、その「ないです」というのも、重要な情報だと思うのね。
菊田 配慮申請って、申請を出すだけじゃなくて、こちらが求める配慮がどの程度実現できるかを話し合う建設的対話が重要なんだけど、それには、本当は保護者・本人と高校の間でやり取りが必要のはずで。じゃあ、どの段階でやり取りができるのか。配慮申請の締め切りの前なのか、後なのか、という見通しって重要ですよね。
中嶋 そうそう、見通し。配慮申請を、締め切りよりずっと前の「11月に出せる」というのが分かっているのと、「12月21日(締め切り)までに出せば良いんですよ」というのが分かっているのとでは、全然違います。だから私の事例をあるよストーリーバンクに出すことにしよって。そうすると来年受験の人は、「じゃあ11月から(配慮申請を)出そう」と思ってくれるわけでしょう。
菊田 そうですよね、1月24日頃が入試だから、12月21日に申請を出したら、もう建設的対話のやり取りをする時間はない。
中嶋 それで、中学校を説得するため、状況を常に中学校に伝えてました。高校や他の学校での合理的配慮の実施状況が「今こういう感じですよ」って。
菊田 配慮入試って、初めての学校が多いから、まだどこも試行錯誤ですからね。周りの実施状況を知ることで、中学校も一緒になって、見通しを持ちながら、どこの段階でどういう交渉をしていくというのを組み立てることができる、と。
中嶋 学校にとっては、そこ(手続き面)の方が重要みたい。管轄の教育委員会はこういう風に言っているけど、もう出して良いらしい、とか。あと、「先輩はこうだったけど」という過去の事例とか。
菊田 手続き面ね。でも実際それはすごい大事なところ。
中嶋 意外と中学の先生たちは(手続き面も)情報が入りにくいらしくて、「意外なこと私に聞くんですね、先生笑」みたいなことが結構ありました。
菊田 中嶋さんは情報通だったからね(笑)
***=====***=====***
今シリーズは、全部で4回です。
次回は、「他校の事例を参考に」「子どもとの関わり方」など、受験にまつわるお話を伺いました。
8月15日会員限定での公開です。どうぞお楽しみに。
【お問い合わせ先】
一般社団法人読み書き配慮
〒169-0072 東京都新宿区大久保3-14-4毎日新聞社早稲田別館5階
あるよ相談についてお問い合わせ
その他サービスのお問い合わせ