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――ここ数ヵ月をかけて、取り組んできた読み書き配慮のホームページのリニューアル。読みやすさを大切に、フォントもモリサワUDフォントで生まれ変わります!(近日中にリニューアル予定です。)
そこで今回は、株式会社モリサワ 公共ビジネス課の高田裕美さんに、フォントについてのインタビューを行いました。
高田 わたしはモリサワの子会社だったタイプバンクというところで、32年間フォントデザイナーをしていました。「UDデジタル教科書体」がリリースされ、モリサワに移ってからは、このフォントを必要としている子どもたちに届けたい、広く普及していって欲しいという思いから、デザイナーとしての開発を離れ、「フォントの大切さ」や「フォントの使い方」を教育現場のみなさんに知ってもらえるような活動をしている課に入りました。
今まで様々な書体を作って来ましたが、今回はこの2つのUDフォントについて説明をしますね。
左が「UDデジタル教科書体」、右が「BIZ UDゴシック」になります。
このUDというのは、ユニバーサルデザインの略で、UDフォントは広報誌や公共のサインや食品パッケージなど、様々なところに使われています。
菊田 UDフォントは他のフォントと何が違うのでしょうか?
高田 ユニバーサルデザインとは、文化、国籍、性別、障害の有無、能力差などを問わず誰もが利用できるというデザイン概念のことです。「UDデジタル教科書体」は、そんなユニバーサルデザインのコンセプトをもつ、日本初の教科書体です。UDフォントには、明朝体、ゴシック体、丸ゴシック体などがあるのですが、教科書体として一般市場でリリースされているのは今のところ、この「UDデジタル教科書体」しかありません。
人が情報を認知するには聴覚や触覚などありますが、視覚から得る情報が多くを占めています。その視覚から得る情報の中には図版や写真、イラストなど色々ありますが、その中でも、やはり文字情報が大きな割合を占めているかと思います。
そしてUDフォントは、誰にも見やすく、読みやすく、間違いにくく、伝わりやすい書体、ということをコンセプトに置いています。
高齢になると遅かれ早かれ誰もが白内障になると言われています。高齢化が進んでいる日本では、UDフォントの需要は大きくなっています。また、国連の障害者権利条約において批准国となった日本は、2016年に「障害者差別解消法」を施行しました。UDフォントが今いろいろなメディアで取り上げられているのは、これらの社会的背景もあるかと思われます。
では「百聞は一見にしかず」で、MS明朝をわたし達のUDフォントに変えてみたいと思います。
いかがでしょうか? どちらが読みやすいでしょうか?
一般的に「横線が細くて、縦線が太い」というのが明朝体の特徴ですが、UD明朝は、横線が普通の明朝体よりもちょっと太めに出来ています。 また「す」のループを大きくしたり、かなの脈略を抑えてわかりやすくしたり、濁点と半濁点を判別しやすくしたりと、色々な工夫がなされています。
だからパッと見ても、これだけの違いがあることが分かるのではないでしょうか。
また、わたし達が書体をデザインする時、仮想ボディの中に字面という枠を設け、デザインしていきます。 字面は書体をデザインするときに仮想ボディに対して「どのぐらいの大きさで作るか?」を決める重要な基準枠になります。
上記の図の 従来のゴシックと「BIZ UDゴシック」を見比べると、UDゴシックのほうの字面が大きく取られているというのが分かるかと思います。 文章を組んだときに、この上下を見比べてもらうと、下のほうが大きく見えますよね。ですが、文字サイズは同じなんですよ。
今、ご紹介した UD明朝体と UDゴシック体は、昨年(2018年)の秋から、 Windows 10に標準搭載されていますので、ご使用のパソコンが Windows 10であれば、ご利用いただけますよ。また今ならお試し期間で、モリサワWebサイトから無償ダウンロードも可能です。
またモリサワでは、これらだけでなく、色々な UDフォントを用意しています。書体の太さのことを「ウエイト」というのですが、 これらの明朝・ゴシック・丸ゴシックは 5 種類のウエイト のバリエーションのあるUDフォントです。また視覚が狭い部分しか見えない人たちには「コンデンス書体」というのもあります。これは Excelなど表組みのとき文字が溢れてしまう場合にも便利なフォントです。
菊田 これらUDフォントは個人でも利用できるのでしょうか?
高田 有料になりますが、「MORISAWA BIZ+」という月300円で43種類のUDフォントが使いたい放題のサービスもあります。 https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/bizplus/
これからお話する「UDデジタル教科書体」のラインナップも全てご利用いただけるサービスです。
菊田 「UDデジタル教科書体」は、私も注目していて、ディスレクシアの子どもたちにも読みやすいと言われていますよね。「UDデジタル教科書体」は、具体的にどのような書体で、どんな経緯で開発されたのでしょうか?
高田 「UDデジタル教科書体」は、2016年に、これら 4 種のウエイトでリリースされました。
その半年後にマイクロソフト社から声が掛かり、この中の「R」と「B」という2つのウエイトが、2017年秋に Windows 10 に標準搭載されました。
そして、 フォントで ICT教育現場におけるユニバーサルデザイン化に貢献したとして評価され、昨年(2018年)キッズデザイン賞・審査委員長特別賞を頂きました。
次回予告(10月10日に掲載予定、会員限定)
第2部では、「UDデジタル教科書体」の開発背景やデザインのコンセプト、また科学的な検証などについて詳しく聞きました。 お楽しみに!
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