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川本 先ほど検査の矛盾の話もありましたけれども、例えば「うちの子、先生に授業の話を聞いてないって言われるんです」という同じ主訴(悩み)で、相談機関に来られたお子さんでも、言語理解が極端に低いお子さんもいれば、ワーキングメモリーが低いお子さんもいるんですね。そうすると同じ「話を聞いていない」という主訴であっても、対応が異なってくると思うんです。
例えば、理解力が低い場合は確かに話を聞いていても理解できないわけだから、聞いているのは苦痛だし、離脱しちゃいますよね。じゃあその子に、どうしたらいいのかと言ったら、
長々と喋ると、余計分かりにくくなるので、指示を短くするとか、言語で理解するのが難しければ、書いて示すとか、絵で示すとか、耳がダメなら視覚に訴えて説明してあげるとか、という方法の方がきっと聞こうという気持ちになる。
逆に、ワーキングメモリーが低くて聞いていないというお子さんであれば、そもそも注意力・・・例えば先生の後ろの黒板に書いてある文字が気になって聞けないのかもしれないし、窓側の席だったら、外が気になって聞けないのかもしれないし、この話がいつまで続くのかという見通しが立たないために集中できないのかもしれないので、「先生の話はいつまでだから頑張って聞いてね」と、見通しを立ててあげることで聞けるかもしれない。
このように、その子の検査の結果から、「原因」が違えば「対策」も違ってくるので、「主訴」に立ち返って、検査結果を日常と交えて、原因と対策を考えるところがやはり重要かなと思います。
野中 療育ではそういうことを先生たちが、子供達に寄り添いながら繰り返しやっていくということでしょうか。
川本 そうですね。 苦手なところをどう補っていくかとか、どういう伝え方をしたら伝わりやすいのかを一緒に検討するとか、というところだと思います。
野中 療育では心理士の先生達が、グループで話し合って方向性を決めるんですか?それとも、一人の先生が、その子に合ったやり方を考えていくんでしょうか?
川本 それは事業所によると思います。私の場合は、比較的”その子の担当”ということでやることが多かったです。担当が決まったら、検査結果や日常生活の状況の聞き取りなどから自分で長期目標、短期目標ということで目標を立てて、短期目標に関する課題を考えます。でも、まだ若くて慣れないうちは、引き出しも少ないので、「この目標のためにどういった課題をやったらいいのかな」というのは、ベテランの先生に聞きながら、または本を調べながら「こういう課題をやったらこういう力が伸ばせるかも」みたいなところをやることが多かったです。
菊田 障害がなければ、療育そのものを受けるチャンスを得にくいってことはあると思います。でも心理学的な療育的観点に基づく子育てのヒントって、すごい的確ですよね。特性の強いお子さんにはどうしても”難しい、育てにくい時期”ってあるので、そういう時期に心理士の先生に伴走してもらうのは、いいなと思います。
川本 そうですね。それは私も育児をしてみて、より強く感じるようになりました。療育では学習に関することだけでなく気持ちのコントロールとか相手の気持ちの理解といった社会性の部分を取り扱うことも多いのですが、そのようなことってあまり学校で習わないことも多いですよね。でもとても大切なことですし、教えてもらえば分かるのに…という子も結構いるので、療育でおこなっていることが、もう少し学校現場で扱ってもらえたらいいのになと思います。
検査を受ける前に
川本 それから、診断がつくかつかないかは別として、できれば検査結果は、保護者にも、そして分かる年齢になったら本人にもフィードバックすべきかな、と私は思います。でも、なかなかそこまで丁寧に対応してもらえることは少ないかもしれません。検査を受ける時に、『こういうことでも困っていて、診断を受けたい』という風に言ってしまうと、”診断を付ける”ということが目的になってしまう可能性はあります。そうすると、検査が”診断の材料”にしかならなくて、「ADHD です」とか「診断はつきません」で終わってしまうこともあると思うので、せっかく検査を取られるのであれば、「検査結果から本人の特性も知りたいです」という風に、検査を受ける前に伝えると、もうちょっと丁寧にフィードバックしてもらえる可能性はあるのかなと思います。
野中 保護者側も、何を知りたくてこの検査に辿り着いたのかを、医師に丁寧に説明した方がいいということですよね。
菊田 経験から言うと、親としては今の状況が混沌としていて、何の不具合なのかさえ分からないから、とにかく病院に行く。そういう状態で、検査に繋がっていくんだと思うんですよ。そうすると、検査の内容もあまり知らされずに、検査のベルトコンベアーに乗せられていく感じで、そのまま検査結果を渡される。結局、その検査によって何がわかったのかさえよく分からない状態でっていうことも少なくないと思います。
私の場合は、児童精神科の主治医の先生に「今後、読み書きに困難が出てくるかもしれない。心に傷がつかないように育てなさい。できれば海外に出しなさい。」ということを言われて終わりでした。その時は、結局療育には繋がらなかった。なので、学校の先生に説明をするために、とにかく「診断書」をもらおうと、あらゆる検査を受けました。
「読み書きに困難が出るかも」と言われた1年生の5月ぐらいには焦りました。「この子が、文字を書けるようになるために何とかしなければならない」と。その時かかっていた療育センターは療育の枠がいっぱいで、息子は療育には繋がらなかった。今考えればとても浅はかなんだけど、シナプスは8歳くらいまでしか成長しないと聞いていたので、とにかくそれまでの間にトレーニングでなんとかできないかと探しました。でも見つからない間に東日本大震災が起こって。結局具体的なことは何もできないまま、8歳は過ぎていきました。笑。
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