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菊田 見立てをするにあたっては、多分、学校生活や普段の生活を主眼に置きながら、何に困っているかな?っていうところを見られるんじゃないのかな?って思うんですけど。
内藤 一番最初は、心理検査ですね。ここでとる人もいるし、持ち込む人もいるし。
武井 その検査というのは何ですか?
内藤 WISC-Ⅳなどの認知特性を知る検査をします。
心理士とか、そういう検査や相談を受けられる人が、お母さん、それから本人から相談を受けて、「じゃあ何曜日の何時の指導で」ということが決まったところで、私に話が下りてくるんですね。その段階で、検査の結果と、心理士の方で見立てーこういうことが多分必要、それから親御さんはこういうことを求めてここへ来ていますという「申し送り票」がきて口頭での引き継ぎがあります。それを元に、とりあえず、初回分を用意します。事前にお電話させていただいて、好きなものとか嫌いなものとか、好きなキャラクターとかテレビとかそういうのを伺います。それを指導の初回と、継続して来たいと思ってもらうために課題として用意します。逆にこういうものはだめですっていうものは使いません。
それでも、WISCの結果とかを見ていても、おやっ?ていうことはいっぱいあったりするので、2〜3回やって、こうじゃないかな?とか、親御さんの希望とご本人の状態が違うことも多いので・・・。その辺を親御さんと簡単に話をして、「ご希望こういうところでしたけれど、ちょっとその前のところからやっていいですか?」みたいな確認をします。
菊田 具体的にどのような指導をされたのですか?
内藤 律くんの場合は、やっぱり主治医の先生から「ちょっと書けるようにしてあげて」というのがあったんですよね。なので、手で名前を書く練習が、毎回絶対やることの中に入っていて。「金」っていう字を書くのに、一画ずつ書いていって、で、鉛筆は無理なので、指でなぞらせて、で、最後の一個だけ「本番やろう」って言って、ここに書くっていうのをやっていたんですね。
1,2,3みたいにして、書き順を覚えて、ここに書いて、最後本番みたいにして書くっていうのを。「金」だけ、「坂」だけ、「律」だけってやって、「金・坂・律」書くのに何年かかったかな。
で、これがそれぞれ単品で書けるようになって、今度は続けて横書きで名前が書ける練習をしていて、そしたらお母さんの方から「先生、縦書きで書けません」と言われて。「あ、じゃあ縦書きも練習しましょう」となって、だから、縦書きは縦書きで書く練習をして、横書きは横書きで書く練習をして。でも毎回一回勝負ですよね、それ以上はもう練習はさせない。鉛筆はもうそれ以上は持たせない。
菊田 その途中で住所を書くっていうのも?
内藤 そうです。名前が終わって、じゃあ今度は住所書きましょうとなって。住所は漢字が多すぎちゃって、もう覚えられない。◯◯◯市・・・とにかく、なぞるのも大変だし、何のこっちゃになっちゃって。だから「お母さん、もうこれは漢字が多すぎて、無理だから、やめていいですか?」って聞いて、「いいです」と言っていただいたので、「じゃあもう、名前だけで良しにしましょう」と。もう、覚えられないし、負担になっているのが明らかだから名前だけ、どういう状況でも書けるようになっていれば良しにしましょう。住所は書けなくても何とかなるけど、名前はもしかしたら、自筆を求められることがあると困るから、名前だけ何とか。でも、こんなにパソコンが進化すると思ってなかった時代だったので、自筆でも書かなくてすんじゃっているみたいですね。
菊田 ああ、そうなんですか。いまは名前は?
内藤 ずっと書いてないと、もしかしたら消えちゃったかもしれないですね。時々書いてれば、出てくるかもしれないけど。
「どうやらの形」っていう言い方をしてましたね。これか?これか?みたいなのはできるんだけど、何にもないところから思い浮かべるっていうのはできない。白いモヤの向こうに何かあるみたい なことを言っていました。律くんはこっちに分かるように伝えてくれるので。「あぁ分かった、そういう感覚なんだ」って。律くんから教えてもらったことはいっぱいありますね。
菊田 名前の他に、書くことについてはどんな指導をされていたんですか。
内藤 律くんの場合は、最初ポメラで一言日記みたいなものを。そのうちiPadを使うようになって。マインドマップも彼が自分で使えるので、文章を作る時に(小論文みたいなものとか)iPadで作って、じゃあこの辺のことでまとめればいいんじゃない?っていう話をしながら入力していった感じです。私が文章にすごく手を入れたとかじゃなくて、「ああいいんじゃない?」とか「この辺にしておけば?」とか「私だったらこの辺の話知りたいかな?」って。高校の夏休みに宿題を持ってきて、近所の中学生に数学の楽しさを教えるっていう授業をやらなくちゃいけないから、それのレジュメを作るから、これでいいか見てくれって言って来たことがあって。じゃあ、私は数学まったく分からないからその中学生の立場で読むねっていって。「最初から何とか理論とか言われてもちょっと引っかかるなぁ」とか、「もっと最初にこういう楽しいことがありますよっていうことを教えてもらった方が、まだ続きの話を聞くかな~」っていうのとか、これをちょっとこっちに持ってきて、っていうのをちょっとだけ手伝うっていう感じで。彼は力があるから、合いの手を打って、「ああそうだね、いいんじゃない?」って言ってることの方が多かった気はしますけどね。
菊田 合いの手って大事ですよね。合いの手で乗せていく技。
内藤 合いの手は、そうですね、律くんの言っていることを全く繰り返してフィードバックするだけでいいのかなって思います。
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次回は、6月15日会員限定公開です。
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