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西山 そうですね。どういう準備をしてあげたらいいかが分からなくて不安だったので、入学前に中学校に聞きに行ったことはあります。その経験を生かして、今年甲斐くんの担任になった先生と「早く確認しましょう」と、確認できることは早くっていう感じでやりました。
聞いても分からない所は、早めにお尋ねした方がいいし、それこそ具体的に聞ければ聞きたいことは山ほどあります。また保護者の視点はまた違うでしょうし、本人にとっては、本人の口から聞いた方がいいと思うので。
菊田 なるほど。先生方もわからないと不安ってことですよね。
西山 そうですね。せっかくこの学校に来たいと思って、来てくれたなら、学校側で対応できることがあるのであれば、できるだけのことをしたいと。そのために確認をしたいっていうことです。
菊田 学校として、つまり、人を育てる機関として、人間同士で対峙してくださっているっていうのがすごく伝わってきます。ここでの先生方のお取り組みを、日本中の学校に伝えていきたいなって思います。
「高校っていうのは人を育てる学校なんだよ」ということをお話しくださっているように感じて、すごく心強く思いました。
西山 実際に合理的配慮を実施してみて、これはもうこの子に対する配慮というよりも、全体にとっても意味があることなんだなっていう実感がありました。
その子に向けてやることが、他の子にとって邪魔になることよりも、他の子にも必要だったりすることもあるじゃないですか。一緒に確認するとか、いい影響の方が結構あるかな、と思って。まあ、そのプラスアルファのこともあるんですけど、でも翻って、いわゆるユニバーサルデザインじゃないですけど、他の子にもいい影響があることが結構あるので、早めに動いて困ることはないかなと思います。
深見 入試が終わるまで、他に在校生がいない状況で、わりと教師にも空きがある時の対応で入試はいくんですけど、実際に入学してそれが3年間継続する時には、入試の時とはまた別の、細かな配慮が必要になってくるというところですね。
だからまあ、彼女が学年主任になってくれて、それを理解して非常に動いてくれたことが大きいと思いますし、いわゆるインクルーシブ教育、つまり共生、共存、尊重ということを考えたときに、さっき言った通り、受け入れることで他の生徒に得られるものがあるということ、それから、甲斐君のお母様、保護者の方もーー苦労と言っていいのか分からないけれども、やっぱり色んな思いを持ちながらずっと育ててこられたと思うんですよね。そういう人たちにもいろんな力を伸ばすチャンスがあるんだっていうことを示せる場として、うちの高校があればいいかなぁと思ったりはしています。
菊田 今年甲斐君が私たちと一緒にL D学会で発表したときに、高校の名前を出していいかと確認をさせて頂いたら、あとで先生から電話を頂いて「もうそれはぜひ名前を出して、堂々と発表してきなさい」ってわざわざ先生が電話をくれたって甲斐君から聞いたんですけれども。その一言って、教育的意義がものすごくあると思うんです、私。彼の取り組みを肯定して、それを伝えるということ。
そしてまさに彼は、彼に続く子供達の灯になっているし、日田高校が、高校の灯のトップバッターとして私たちに光を与えてくれているなぁという感じがします。
菊田 入学してすぐの頃、甲斐君に会いに行ったんですけど、「入学して最初の試験にもう配慮が用意されていたっていうことに驚愕した」っておっしゃっていました。「まさかそれが用意されているなんて思いもしなかったので、ものすごく受け入れてもらったっていう感じがした」っていう風に、彼は言っていました。
もう最初の試験の時から配慮をするということで動かれていたっていうことですよね。
深見 まあそこの配慮は入試がベースになったんですね。入学式の後もうちの学校は試験をするので、要するにその試験は入試と一緒です。とにかく入試で別室を用意しておいて、入学後に用意できないというのは、それはおかしなことなので。
菊田 おかしいんですけど、そこは、世の中結構おかしいことがまかり通っていて。笑。
だからいちいち感動するわけです。
深見 例えば別室は入試でもやったわけで。入学したらおしまいですよっていうことにはならないですよ。入学式の翌日の別室、つまり”テストの時の別室”というのは、もうすでに入学前に決まっていた、と認識をしています。
菊田 先生方の反応っていうのはどういった感じだったんでしょうか。
深見 入試のところから、彼の情報については定期的にというか、分かった段階で「こういう生徒が受けに来てくれます」というのは職員会議とかで流していました。
菊田 「そこまでやるのか?」とかいうお声は上がらないものなんでしょうか。よくあるのは、「甘やかしてるんじゃないのか?」とか。中での調整はどんな風になさっているんですか?
西山 ”甘やかす”って言葉はないですけれども、「そんなにしなければならないの?」という疑問は、当然ゼロではなくって。
深見 いやもう、その意義とか、目的を根気強く伝えていくということになっていくんでしょうね。共有していくっていうことだと思います。
まあ確かに難しいんですよね。その全部を受け入れると、また全体的なものとの動きを考えた時に、人手の問題であるとか、設備の問題であるとか、費用の問題であるとか、どうしてもやっぱり、壁の一つとして出てくる。もう一つは、その後の人生を考えたときに100パーセント全てを受け入れるということではなくて、「ここにはここのルールがあるから」っていうその接点を、どう持っていくのかっていうことだったろうと思うんですね。それが非常に重要で。ルールを決めていくっていうことですよね。
それでも個々の教員の意識っていうのは、持ち方、考え方があるので、やっぱり、スタートするまでは温度差であったり、そういうものは完全には消え去らなかったであろうと思います。去年の生徒さんもそうでしたし、今回の甲斐君もそうですけど、恐らく入ってきた本人たちの明るさであったり、前向きさであったり・・・うん、ひたむきさであったり、多分そういうものが、教員の温度差を徐々に徐々に縮めていく。自然にこう、そこに彼らがいるのが当たり前、配慮するのが当たり前、っていう繰り返しの中で、日常的なものへと変わっていく。まだ完全にではないでしょうけど、動いているっていうことだと思うんですよね。
菊田 なんか、素晴らしいですよね。
そうやって、人とのかかわりの中で子供たちを育てていきたいと私たちは思っているので、先生方がそういう風なことを、――人間として、感じながら日々を過ごしていく中で、「ああ配慮って当たり前だな」っていう日常ができていくって、素晴らしい学校の在り方だなと思って、ちょっと、涙が出ました。
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次回は、3月15日公開です。
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