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菊田 中学校にお問い合わせになったのは大体いつくらいですか。
深見 多分2月の中旬でした。推薦入試の合否とかが、全部片付いてから、一次入試の間までに、竹中中学と何回か連絡を取って。来ていただいたりして、話を詰めて。
その中で、実際に一番問題になったのは、問題用紙の拡大でした。
菊田 難しいというのは物理的に印刷機とかの問題ということですか?
深見 いえ、「入試」っていうことです。入試の問題は事前に我々が見ることができない。
菊田 ああそうか、県下一律で作成されるから。
深見 はい、本番の時間前まで我々は見ることができない状況なので、そこから拡大印刷を準備するのはどう考えても無理だと。だから問題用紙の拡大は県の方で準備してほしいという依頼はしました。県はそれに応えてくれて、甲斐君の分だけ、A3に拡大されました。
菊田 あ~なるほど。それから、教室の光の具合を、カーテンを閉めるとか、事前に本人と打合せをされましたよね。
深見 あ、そうです、そうです。
竹中中学と連絡を取ったりして、どういった配慮が必要かっていうのがある程度見えてきたときに、最終的に机の位置はどうなんだ?机の大きさはどうなんだ?明るさはどうなんだ?それから別室のその位置も。特に英語のリスニングとか、それから他から音が漏れてくるのが邪魔になるんじゃないのか?なんていうところは、どうしても我々が考えても分からない所だったので。直前だったんですけれども、2月の月末あたりです、お母さんと本人に学校に来てもらって、実際に別室を考えている教室の方に行ってもらって、机はどういう風に配置をしたらいいのか?とか、天気はどうか、曇りだったら?雨だったらどうか?とか、それから音を実際に流してみて、邪魔になるか?とか、っていう打合せを現場でやったっていう感じですね。
菊田 なるほど。その事前の打ち合わせは、どちら側から連絡を取られて?
深見 竹中中学から「本人が希望している」っていう連絡があったと思います。
同時に我々の方もそれをやらないと、ちょっと分からないなと。
菊田 ここまでの流れの中で、ご本人としては市教委や学校を通じて、県教委に配慮の相談をなさっているわけですけれども、やってくれるのかやってくれないのか、分からない。回答がいつくるのかも掴めない。一方で、高校は高校で本人がどんな配慮を希望されているのかが掴めない。なんとなくその辺がかみ合わなかったような印象を受けますね。
深見 そうですね。ただ、恐らく高校入試においては、ほぼ初めてのケースだったろうと思うんですよね。笑。こちらからすれば、学校は県から独自で動いていいのか判断がつかない。もしかすると県は、私たち学校からの要求を待っていたかもしれない。恐らくそれぞれの領域とか連携のシステムが明確でなかった。それゆえに、どこがどういう指示を出して、コントロールタワーになるのかっていうところは、正直手探りの状況だったと思います。
菊田 なるほど。入試での合理的配慮を決定していく過程では「コントロールタワーを確立する」といことがポイントの一つになりますね。本人、保護者、中学校、市教委、県教委、高校と、関係する人や学校や機関がたくさんありますからね。
深見 それぞれが放射線状に色々動いていくとちょっと厳しい。
中学校と高校は話が進んでいるけど、そのことをいちいち県教委に細かく連絡したかっていうと、今考えると、そうではなかったところもある。
お互いが「待ち」の状態の時間帯が生まれてしまう。「あれどうなったかな~」っていう。恐らく、ご家庭にも、中学にも、高校にも、県にもすべてのところに「待ち」の状態が生まれてしまうとロスが大きいかなと。
菊田 そうですね。配慮に向かって前向きの姿勢なのに、コントロールタワーがないばかりに、お互いにジリジリしながら待っていることになりますね。
深見 甲斐君の事例は、恐らく色々変わっていくきっかけになるんだろうなと思います。もう一つ、今回、影響として大きかったのは、やっぱりコロナ対応です。コロナ対応で別室を用意したり、試験監督をどうするかなどの問題もありました。感染症の問題は致し方ないし、受験する側――子供たちに罪はないので、出来る限りベストの状態で受けさせたい。そのために未知の中でどういう対応をするんだっていうところが、なかなか決められない事態があった。で、コロナの方が決まらなければ、甲斐君の方も動けないという、ちょっと連動性があって。で、これがまたなかなかスムーズにいかない一つの要因だったんですよ。
菊田 なるほど。
菊田 では、ちょっと先にお話を進めさせていただきたいんですが、次は”入学した後”ってことになるんですけれども。実施に当たっては特に問題はなかったですか。
深見 それはですね、入試の前に本人とお母さんが来てくれたことが、最終的には非常に大きかった。お二人が来てくれたことで、色々と入試の微調整をし、こちらも状況が掴めました。その結果として、入試で大きなトラブルもなく、また不安を与えないような、こちらとしても出来る限りの対応をできたと思います。そして、恐らくそれによって、本人と保護者も日田高校に対して信頼感を持ってくれて、色々と相談してくれるという状況ができたように思います。
菊田 それはもうそうだったと思います。「入試前の打ち合わせで高校に行ったら、高校側が大変色々聞いて、微に入り細にわたって調整してくださって、非常にありがたかった」と、もう何度もその頃聞きました。そして、直接繋がると、人間同士として「ああしようか、こうしようか」っていう話し合いができるんだけど、なかなか書面の上だけの繋がりではそれを伝えることができないのでもどかしかった。お会いできてよかったということはおっしゃっていました。
先生が「信頼関係」とおっしゃいましたけれど、その時に甲斐くんのお母さまが「子供を預けるにあたって、非常に信頼してこの学校に子供を預けるんだ」ということをおっしゃっていたのをよく覚えています。
深見 うん。だからはじめて日田高校にいらっしゃったときから、入試が終わるまで、”出来る限りの対応をする”ということは、すごく重要事項として考えていましたし、入試が終わった後の反応を見ても、大きなトラブルもなく、安心して受検できたな、という印象を受けていました。
そこから、今度は入学までの間に色々準備をしなければならないことも出てきます。本人は4月になって新学期がスタートしますよね。その時に彼女(西山先生)が学年主任になることが決まるのも、4月の頭になってからなんですよ。そこから、彼女が色々細かなことに気が付いて、特に教科書の問題であるとか、あれが必要だ、これはどうしたらいいんだ、ということで非常に積極的に主体的に動いてくれて、準備をしていったというところです。
菊田 西山先生は、LDのお子さんのご経験がおありなんですか?
西山 ないです。L Dへの合理的配慮っていうのをはじめて考えなければならなかったです。
菊田 そうだったのですね。「はじめて」ということのご苦労はやはりあったと思うのですが。
そのあたりのことを詳しく教えてください。
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次回は、3月1日会員限定公開です。
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