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一般社団法人読み書き配慮
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今日は日頃から読み書き配慮の活動に協力してくれている、大分県甲斐潤樹君が通う日田高校の教頭深見先生と、1年生の学年主任、西山先生にお話を伺いました。
菊田 私たちと、甲斐君の出会いは、もともとは2013年にある大学の障害学生支援プログラムでご一緒させていただいたことでした。甲斐君が小学校3年生くらいの頃からお付き合いさせていただいています。配慮を申請しては断られたり、あるいはうまく配慮を得られたりと、同期の親子同士で情報交換をしながら、またお互いに勇気をもらいながらやりとりして来た中で、LDへの合理的配慮の事例データベースを作ろうということで、2018年に一般社団法人読み書き配慮を立ち上げました。2019年からデータベースを公開しています。
読み書き配慮を設立するときに甲斐君に話したら、「僕らの声を社会に発信する会社を立ち上げてくれるんだ!」ってすごく感動してくれて。その頃中学2年生か3年生だったんですけれども、「僕にも何か手伝わせてほしい」と作文を寄せてくれたり、事例を写真付きで紹介してくれたり、文字通り、読み書き配慮の看板になってやってくれています。
甲斐くんのように、学習障害と向き合いながら自分から配慮を願い出て、配慮を提供してもらいながら自分の学び方を確立していっている張本人というのは、すごく勇気があると思うんです。先駆者であり、賞賛に値する存在であり。心からカッコ良いと思うんです。彼らをモデルにして、後に続く子供たちの心に勇気が湧くと良いなと思っています。
甲斐くんのようなLDの子供たちは通常の学級に8%くらいいると言われています。
一方で、現行の法律のもとでは、特別支援教育も障害者差別解消法による合理的配慮も保障されていますので、LDへの認知さえ広がっていけばL Dへの配慮というのはこれから急拡大して、当然に進んでいく。また、進ませていかなければならないと思います。しかしながら現状においては「高校入試での配慮がなかなか進まない」「高校に入ってから配慮してもらえない」という声も数多く聞かれますので、そこについて、いま実際に合理的配慮を実施されている先駆者の先生方に、どのような形でそれを進めているのかをお伺いしたいとこのldにインタビューをお願いした次第です。先駆的事例として紹介させていただけたらなと思っています。きっと、ご苦労がありながら、迷われたりする中で進めていらっしゃると思いますので、そういうご苦労の部分が、皆さんの参考になると思いますので、そのあたりをできるだけ詳しく教えて頂けたらと思っています。
菊田 最初に甲斐君との出逢いから教えて頂けますでしょうか?
深見 大分県内の高校はだいたい夏の8月~9月に中学生対象の説明会をするんですね。そこに甲斐君が参加してくれたのが出会いです。
甲斐君がもともといたのは大分市内で、ここ日田市は高速で1時間半くらいで、結構離れているんですよ。通うのはほぼ無理という中で、うちを志望された理由は、本校がSSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校だということだと思います。SSHは県内で3校あり、1つは大分市内の舞鶴高校、もう1つが佐伯市の佐伯鶴城高校、それから本校です。ご本人は研究したりすることにすごい興味を持っていて、それでSSHを希望されていたと思うんですが、県内なら3校の選択肢があったのかなと思います。大分市内の舞鶴高校は、非常に規模が大きいんですね。実は、我々2人(深見先生・西山先生)とも、前任校が舞鶴高校なんですけれども。
菊田 たまたま両先生の前任校が同じだったんですね。
深見 その中で、甲斐君が志望校の1つとして日田高校の説明会に参加をしてくれました。最初、受付の段階で、配慮って耳の事かな?と思っていました。そういう子が参加するという情報だけは入っていたのですが、体験授業の時は直接本人とは会えず、それから、特段問題があったという報告も入ってきませんでした。ただ、生徒(中学生)が授業を受けている間に、我々教頭の方で保護者に学校の説明をするんですね。その説明が一通り終わった後で、「実はうちの息子がL Dで、こういう風な身体的な部分があって、日田高校では合理的配慮の提供はどうでしょうか。」という質問が来たんですね。それが、多分お母さんだったんですね。実は以前から合理的配慮の提供というのを準備はしていて、提供項目のリストとか、システムを構築している最中ではあったんです。それで、その段階ではお母さんには、「今年からうちも合理的配慮を必要とする子も出てくることを想定して、準備していますので、またご相談ください」という返事をしました。
菊田 なるほど。合理的配慮については、甲斐くんの話が来る前から学校として体制の準備を進めていたということですね。そこに甲斐君がLDへの配慮を申請に来たと。
深見 そうですね。学校として準備を進めていたこともあったので、甲斐くんのお母さんに対しては、「合理的配慮を前向きに検討する」ということをお返事した、ということです。
これが8月終わりくらいですかね。
ただその後、本人の進路志望がどうなったのかっていうことは、全然分かりませんでした。それがーー1月15日付だったと思うのですがーー県教育委員会から「甲斐君が日田高校を希望している」という連絡が入って。笑。「入試においては状況に合わせた配慮をしてほしい」ということでした。それで、本人がここ(日田高校)を希望してくれているんだってことを我々は知ることになります。ただその段階でもまだ、具体的にどういった配慮が必要なのか、どういった状況なのかというところが、あまり詳しくは分からなかったんです。
菊田 配慮の内容について具体的な知らせがきたのはいつ頃になりますか?
甲斐君側から聞いている情報では、日田市の教育委員会とお話をされていて、それで大分県の教育委員会にあげてもらうことをお話しされていた、ということだったかと思いますが。
深見 多分出身校の竹中中学校と、大分市の教育委員会、それから本人、お母様、それから県教委の間で、おそらく話が進んでいたんだろうと思います。笑。で、我々の方は説明会以降、全然情報は入ってきていないと。笑。
ただ、教育の日だったかな?新聞に彼のエッセイが掲載されたんですよね。
菊田 ラジオでも放送されたものですよね?
深見 はい。そのエッセイで「高校にも一から説明しなければならないのか?」ということを甲斐君が書いていたんですよ。それはいつくらいだったかな、夏か秋口くらいだったと思うんですよね。
それで、甲斐君のエッセイを見た県教委から、その時の高校の対応はどうだったのか、という問い合わせが僕のところに来たんですよ。まあそれには「配慮を拒否するようなことはしていません」とお返事をしたんですが。
その一件があったので、ひょっとしたら甲斐君はうちを受けるかもしれないと思っていました。
菊田 一応、目論見はあったと。
深見 予感みたいなものは。笑。正式ではないけれども、受けるかもしれないと。
菊田 それが、1月15日になって、県教委から正式に連絡が来たということですか。
やっぱりうちだったのかと。
深見 はい。で、そのあとで、どういう配慮が必要なのかっていうことが、だんだんだんだん、うちに伝わってくるようになるんですよね。
菊田 一回で伝わらないんですね。
深見 一回で伝わらない。笑。
別室、問題用紙の拡大、自然光っていう感じで、ちょこちょこと情報が入ってくる。いままでそういう配慮をしたことがないので、「いや、大丈夫かな?」っていう不安みたいなものも正直ありました。実際に現場においてどうなんだろうという見えないところがあったので。
それで最終的には出身の竹中中学に連絡をして「どういう配慮をしているのか」ということを竹中中学校の先生に来ていただいて「こんな配慮をしていたんです」っていうことを共有させてもらったっていうところです。
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