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大学生のLDって、0.007% ?!!!
菊田 先生の新しい検査「RaWF」の活用の形ですけれども。何かのきっかけで学生さんがご自分で困難に気づいたり、周りが気づいて相談に見えたら、「RaWF」で検査する感じになるんでしょうか。
高橋先生 はい、そうなってくれればいいなと思っています。それで、「やっぱり遅いね」となって、「じゃあ試験時間を少し長くしてもいいよ」とか、学習の量を減らすわけにはいかないので、「じゃあ論文を読むときに、ひたすら苦しみながら文字を読むんじゃなくて、パソコンに取り込んで、音声で聞こう」とか、そういったことができることで、もう”学びの質”が変わってくるんじゃないのかな、と期待しているんですけど。
菊田 それ、ウキウキしますね。
息子の高校の先生がこうおっしゃってくださって。その時2年生だったんですけど、「この子、高校2年生まで教科書読んだことがないって言ってるんですよね。でもこの子が教科書を音声で聞くようになったら、これからどんなにできるようになるかと思って。ちょっとやらせてみたいですよね」って。まさにそれが教育者の原点なのかな、という風に私は思ったことがあるんですけども。
大学の先生方はもともと、何かを教えるというより、どうやって学生たちの知識を高めるか、発想を高めるかということをずっと考えていらっしゃるんでしょうから、そこの視点に気が付いてくだされば、これはすごく面白い大改革なんじゃないのかなと思います。
高橋先生 はい、そうですね。その才能を無駄にしないように。
菊田 もしかして眠っている才能が、まだまだいっぱいあるかと思うと、ワクワクします。
読み書き配慮にシンパシーを感じてセミナーなどに来てくださる先生方の中には、自分やご家族に「読み書きの困難があったのかもしれない。今になって気が付いた。」というケースがあるんです。中には管理職を引退された先生で「俺もきっとLDだ」とおっしゃる方もいて。そういう方達が、「違う学びの仕方があったんじゃないか」、「子ども達にそれを提供する道があるのであれば、ぜひ協力したい」と思って手伝ってくださるんだと思うんですけど。まだ掘り出していない子ども達を、学びにつなげていけるとしたら、嬉しいことだと思います。
高橋先生 そうですね、とにかく気づかれていないけど、そこで苦労してきたっていう人も、ものすごくいっぱいいると思うんですよね。さきほど、大学生でLDが少ないという話をしましたが、いま全国調査で把握されている数で言うと、その在籍率が0.007%くらい。
菊田 えー!?大学でですか?
高橋先生 そうですね。高等教育機関の在籍者と全学生に占める、LDのみの診断がある学生の数ということでいうと、そういう数になります。
大学への学びにつなげるには
菊田 先ほど、他のなんらかの障害を理由として読み書きの支援を受けている例もあるというお話を伺いましたから、実際には、読み書きの支援を受けている方はこれよりは多いっていうことでしょうか。
高橋先生 そうですね。そこは大学の方でも柔軟に対応していますので。あとは重複という形で、純粋なLDのみではないけれども、読み書きの困難を抱える例というのはもっとたくさんあります。そうであるにしても、この数は少ない。それがアメリカの例だと、LDの診断があって、配慮を受けている学生さんの数が、全学生の比率でいうと、3%くらい。桁が違うどころじゃないんです。
実数として最新の調査、学生支援機構というところから、全部公開されていますが、LDのみある学生の数が実数で231人。重複が1000あるので、発達障害の重複ってかなりの確率で読み書きも入っているんじゃないかなと、思うんですけどね。それでも少ないですよね。障害学生の全数が3万7600人。4万近くになってきています。これは、全学生に対する比率でいうと、1%超えるんですよ。いま、100人に1人が障害学生なんです。それを考えても「学習障害、ちょっと少なすぎませんか?」と思います。
先ほど、海外だと、誰かが気づいてくれてという話がありましたが、日本人でアメリカとかイギリスとか留学に行って、そこで優秀なのに苦労している学生さんがいると、先生が声をかけるんですよね。「あなたはLDがあるんじゃないか」って。声をかけられて、検査を受けて、条件を満たして、配慮受けている人は、私も複数知っています。ですから、先生方もそういうことを知っていれば、大学で初めて気づかれて配慮を受けられるようになるという例もありますが、日本はむしろ逆というか。LDというものがある、LDの学生がいるということをほとんど認識されていないので、まだまだ学生がこちらからアピールしていかなければならないという現状はあります。
菊田 日本の教育の世界はなぜか「学習は読み書き計算だ」という考えが前提にあるようなところがあって、「読み書き計算ができないってことは、つまり怠けていることだ」というような、どうも学者の先生たちの間でさえ、そこがぬぐい切れないって感じはしますよね。
さっき、発達障害とLDの兼ね合いで、「ずいぶん重複するんじゃないか」ということでしたけれども、どれぐらい重複しているかという実数みたいなものはあるんでしょうか?
というのも、発達障害の診断はあるんだけれども、LDがあるのかどうかはわからないという親御さんが結構多くて。確かに「漢字の書きは悪いみたいだ」とか、「読みもちょっと」とか、そんな傾向は見えるけれども、「これが発達障害なのか、LDなのかが分からない」ということをよく耳にするんです。
私は読みにくさなり、書きにくさがあれば、それはもうLDなんじゃないのかなって思いますけれども、なかなか検査が行き届かない中で、また医療に診断書が書いてもらえない中で、「LDの支援をしてください」と、保護者が言いにくい環境があると思うんです。その辺を解決するにあたって、発達障害とLDの関係はどんな感じなんでしょうか。
高橋先生 先ほど話題に出ましたけど、本田秀夫先生の本によると、複数のそういった特性が重なっているケースは非常に多い。だから「きれいにLDの人と、ASDの人とADHDの人と3タイプいます」みたいな話ではない。という理解の方が、きっと分かりやすいと思うんですね。ただ、本田先生の医学的な視点によると、やはりそれぞれで条件を満たさないと、正式な診断にはならないので、それぞれ症状が多様にあるけれども、個々の診断基準を全て満たせなければ、お医者さんとしてもはっきりASDだとか、LDだとか言いにくいというのは、確かなのかなと思います。それは今の診断基準がそうだから、仕方がない事という部分はあると思います。
菊田 そうですね。でも困難があって、さっきおっしゃっていた「読み書きにつまずいていて、その先の学びが得られないのであれば、その出入口の部分は担保してやって、その先の学びをさせていこうじゃないか」という視点が、教育の中ではやっぱりすごく重要ってことになりますよね。そうすると、先生がさっきおっしゃていた、医療界と教育界の話ですけれども、やっぱりそこは、教育界が自らの責任で「この子には支援が必要」というのを考えてもらいたいなって思いますよね。
高橋先生 そうですね。大学での支援を受けられるかどうかの、根拠資料と言いますか、それを証明するものとしては、診断書や手帳っていうのはもちろんですけれども、高校時代の配慮実績とか、個別の指導計画とか、そういったものがあれば、それなりの根拠として認められて、配慮を受けられるんですよ。ですから、そういう意味で、診断がつきにくいタイプでも、明らかに「困難があるよね」という場合は、高校の方でしっかりとした手続きを踏んで、配慮をしてくれるのであれば、それはまた将来につながっていくかなとは思いますけど。
菊田 なるほど。では教育的な視点でもって、小学校・中学校・高校の間に「この子には読み書きを担保してやる必要がある」と判断されたならば、躊躇なくぜひ実績を作っていただいて大学での学びにつなげて頂きたいな、というところですよね。
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