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菊田 小学校におけるLD支援について教えて下さい。
高橋 そうね、LD支援については、読み書き障害とか算数障害とかって、見えない障害だから、なんかどうも「さぼっている」だとか、その子が「わざとそうしている」だとか、見られ方をするから、「ううん、そうじゃないんだよね。」というところを教員がどう意識するか、ということが重要なことと、あと、一番大きい壁と言うのは、特別扱いをどう考えるかっていうこと。やっぱり学校文化は「特別扱いをしない」という文化が強いの。だからね、特別扱いをするという事を一度真剣に考えてみる必要がある。
一回僕は『特別扱いについての検討』というのを書いているんだけど。
要は、こういうことなの。たとえば、社会科見学で、博物館を見学するというと、班ごとに移動しなさいとしているけれど、そうすると、「私はこっち行きたい」「私はあっち行きたい」となっちゃうじゃない、その時に「ルールなんだから行きなさい!」と言ってケンカになって子供がパニックになってしまって先生たちが「大変だ!!!」となっちゃう。そんなことになるぐらいだったら、支援の人を一人付けてさ、行けばいいじゃんって。発想の転換をしようよって話なんですよ。
菊田 子供のニーズを優先するっていうことですよね。発想の転換。
高橋 以前に僕とは考え方が両極端な先生がいて、移動教室に際して、重い障害の子がいて、その先生は「行ってもあなたのお子さんの課題になるようなことはないしね、パニックも起こすしね、無理していく必要はないと思うんだ。」と親に言うわけです。それで親は「そうですね。」と言って、行かない。
私はね、障害が重くても、人を付ければ行けるんだから、なんとかしようよって考えなんです。
だから、教育委員会に「人を付けろ!」と言って、「いやいや、そんな8人も付けられません!」とか言うから、「じゃあ、何人だったら付けられるわけ?」と言うと、「まぁ、6人ですね。」と言うから、「何言っているんだ!8人付けられないんだったら、あとふたり学生ボランティアを連れて行くぞ!」というと、「それは困ります。」「だったらなんとかしろ!」「じゃあ、7人で手をうってください。」とか言うやりとりをしましたね。
菊田 大人の事情を起点に子供を合わせていくのではなくて、子供の事情を起点に発想してみようよと。
高橋 でも、逆に、人手もない、課題も合わない、それなのにやめろとも言えない、とかいう状態だと、行けば混乱しちゃう。それじゃあ中途半端で良くない。大事なのは、必要に応じて支援の手を付けられるのかどうかを見極めることだと思うんです。
菊田 じゃあ、先生はLDの子供への対応についても?
高橋 LDの子の対応っていうのも、やっぱり必要に応じて支援の手が付けられる状況が大事ですよね。それは、人であったり、物であったり、そういう支援が、あるかどうかっていうこと。そして学校の考え方として、それを特別扱いじゃなくて、この学校では配慮することが普通の対応なんだよ、っていう風になっていくかどうか、っていうことが大きいかな。未だに、学校には特別扱いはしないみたいな文化があるからさ。
菊田 学校には、読み書き算数は手でやるもの。というそういう文化があるのでLD対応って困っちゃうんです。学校文化を変えていくって、大変なことだなって。
高橋 僕は今校長をやっているけど、学校で一番怒られているからね。この学校でね。
菊田 そうなんですか。先生が特別扱いするから?(笑)
高橋 う~ん。特別扱いもそうなんだけど。まぁ、いろいろさぁ、オリパラの担当を決めないといけないという時にね、「それは体育部がやったらいいんじゃないですか?」って言うと、体育部の先生が「いや、体育部も忙しいので、他で決めてもらいたいと思います。」と言ってなかなか決まらないから、僕が「やりたい人がやればいいんじゃないの」って言うと、教務主任が「校長先生、組織なんですから。」って怒られる(笑)
菊田 やりたい人がやるのではダメだと?。
高橋 うちの学校でも、教室で授業を受けられない子とか、校長室登校の子とかがいるわけ。
菊田 そうらしいですね。先生のところは校長室もフル稼働って聞いています。
高橋 校長室でカップラーメンとか作って食べてたりすると、「止めて下さい!」って怒られちゃう。
菊田 アハハ
高橋 「じゃあ、ラーメンでも食べに行くか!」って言ったら、担任をしている先生がそれを聞きつけて飛んできて、「校長先生、ラーメンだけは止めて下さい!」って涙目で言うから、「わかった。わかった。ラーメンは食べに行かない。」って。(笑)
菊田 アハハ。どうして。どうして。
要は、子どものためになんでもあり、ということですね!
高橋 そうそう。子どものためだったらさ、いいんじゃない!っていうね。
そういうスタンスでやってきているから。
違いってなに?
高橋 前任校で、浅草の校外学習をやっていた時も、平たく言えば、買い食いツアーなんですよ。
菊田 ( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
高橋 みんなで500円持って、あっちこっち仲見世を行って。
当時の校長が、「あれはおかしい。」みたいなことを言うから。「いえいえ、校長先生そうじゃないんですよ。」と、全部資料を作って、「これは、総合的な学習の一環で、東京を知ろう!っていう学習なんです。」って説明して、「それが最終的に浅草の校外学習でまとまるんです!」って力説をしたりして。
菊田 自立活動に落とし込む…みたいな。
高橋 でもね、あとで「あの買い食いだけは、許せなかった。」って言われていたらしいけど(笑)。
菊田 ( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
高橋 確かに、管理職になって、社会科見学行くと、「あっ、食べないんだ…」ってね(笑)
菊田 でも、食べるのが面白いんですよね。
社会と学校文化の違いを先生の中で見る、みたいな感じがします。
高橋 そうだよ。学校の常識は、世間の非常識ってね。
菊田 そうなんですよ!学校文化が違いすぎて、学校文化と戦ってきたLDの子とその親たちって感じなんですよ。
高橋 そうだよね。学校の枠にはめていく みたいな。
特別支援学級もそうなんだけどさ、「うちの学級に来たらね、こういう風にしてもらわなくちゃ困ります」みたいな。
菊田 そうなんですよ。
高橋 「この子は座っていられない」とか言われると、何言っているんだ!つまらない授業だったら座れねえぞ!って。
菊田 そうそう。座っている方がおかしいよ。って思うんですけどね(笑)
高橋 そっちに共感しちゃうよね。
副校長の時に、暴れる子とかね、連絡があると、いそいそと出かけて行ってた。先生たちに「なんか副校長先生、いそいそと楽しそうに出かけていきますよね。」って言われてた。
それで相談室に呼んで、暴れちゃうわけですよ、イスとか投げてバンバーンとか。
事務室から人が飛んで来て「副校長先生、大丈夫ですか?」
「大丈夫。どっちかと言うと、俺僕、こっちが専門だから(笑)」
菊田 ワハハ。すごい面白い(笑)
高橋 わからない教員には、絶対に絶対にわからないんだよ。
「そんなね、楽しいだけでいいんですか!」とかさ、「がんばりなさい!」とか、「ちゃんとやりなさい」という文化でやってきているから。
今思うのは、それはね、その人の感性なんだよね、だから否定はしない。
つまりね、たとえば、「まっすぐ並びなさい!」と言った時に、まっすぐ並ばないといけないのか、別にまっすぐ並ばなくてもいいじゃないか!って思うじゃない、でもね、「まっすぐ並びなさい!」と言う先生は、まっすぐ並んでいないと生理的に嫌なんだよね、
菊田 多分そうですね、その先生が気持ち悪いと感じるってこと。じゃあ、そうなると、どっちの感性が普通なんだ?って思っちゃう。
高橋 それから、やっぱり難しいのは、「それは先生が楽(らく)したいから、そうしたいの?」っていう問い直しが現場にないっていうさぁ。何のために?、誰のために?、っていうところが、意外と「今までそうなっていたから」という流れで動いちゃっているから。
菊田 そうなんです。学校文化ってずっとその連続だと思うんですよね。
前年度を踏まえ、前年度を踏まえで長く続いて来ちゃっているから。あたかも日本人の文化であるかのように言われてしまっているけれど、そうじゃないんじゃない?だから、息苦しいんじゃないかと。
高橋 うちの学校で、インクルーシブの研修会をやっているんだけど、真面目にきちんと座って授業を受けているけど、テストが0点の子と、態度は悪くて話を聞いていないみたいだけど、テスト受けると満点の子と先生たちはどっちの子を育てたいんですか?っていう話が講師の先生から出たりするわけです。
菊田 そうなんですよ!どっちの子を育てたいのか!っていうのを以前取材した、麹町中の工藤先生や、桜ヶ丘中の西郷先生も同じことを仰っていて。その子は、ちゃんと聞いていて出来ているのならば、到達しているんだよと。
高橋 結局、何がその時点で大事なのかってことなんですよ。
でも、こういうことも言える。例えばまっすぐ並ぶという時にね、私は「別にまっすぐ並ばなくてもいいじゃん」って思っているわけなんだけど、たとえば、卒業式とか偉い人が来るときとか、僕はいいんだけど、こういう全体の雰囲気があるからちょっと気を遣って並べ!みたいな、そういうのはあるじゃない?
菊田 そういうのはありますよね。
でも、そういう風に話せばいいんだと私は思っていて。”相手からそう思われている”ということをあなたにも教えてあげる。というのが大事。先生も随所に同じことを書かれていますよね。
高橋 そうそう、本人にね。
菊田 そう。“わがままに見られているということも伝えることも必要。わがままでやっているのではないけれど、わがままに見られていることも伝えていくことも大切な事”と(冊子を見る)
おっしゃる通りだと、私も息子を育ててきて思います。
高橋 そうそう、そうなんだよね。いろんな感性を持つ教員がいるから。うちの学校では、「大人も子どももインクルーシブ」って言ってます(笑)。
菊田 学校文化の中で育ってきた先生方にも言えると思うんですよね(笑)。社会から学校がどう映っているかを知ることも大事。
次回は、「制度を知る」「就学相談」についてお話を伺いました。
6月15日会員限定での公開です。どうぞお楽しみに。
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