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野中 「合理的配慮」ということが言われ出したのは障害者差別解消法(平成28年施行)からですよね。そこから大学などで「支援ポリシー」を策定するところも増えてきたけれど、その影響は感じますか?
武井 息子の高校受験は法律が施行される前の年度でした。それから3年たったけれど、変わってない現状に唖然とさせられることも多いかな。
菊田 法律ができても現場レベルまで浸透するのはまだ時間がかかりそう。でも、国公立の先生については合理的配慮は義務なので、少しずつだけれど理解の度合いも深まっているし、反応も以前に比べて変わってきた気がします。
武井 そうですね。実は、息子はこれまで何度か英検を受けてきたんですが、なかなか配慮をしてもらえなくて。それが、今回、配慮申請をしたらとても丁寧に対応してくれました。たぶん、ディスレクシアでの問い合わせは、初めてだったかもしれないですけど、検討してくださったのはとても嬉しかったです。LDの配慮のフォーマットもないし、簡単ではなかったと思います。でも、書字に困難さがある部分をタブレットで受検することができたのは大きかったです。
野中 本当にすごいことだし、やれるんだ、ということがわかっただけでも意味がありますよね。前例ができたことで私たちは勇気が出るし、受け入れる側も動きやすくなる。英検でそういうことができるんだっていうところから、またいろんな可能性が広がっていくかもしれない。
菊田 やっぱり事例が大事ですよね。この間、私の子供の事を知った近所のお子さんから相談を受ける機会があって。実際にお会いして、映像を見せながらいろいろ話をしました。「タブレットやパソコンを使う方法もあるよ」って提示して、「どう? 使ってみる?」って聞いたら、本人が、「おれはいいや」って。それで、私はその子の学校に電話をかけて、本人が乗り気でないことも含めてありのままを報告したんです。そうしたら電話口で副校長先生が、「ああ、そのお子さんについてはICT使用も含めていつでも対応できるよう準備してます」っておっしゃった。「書けないということは把握してました。知的に問題ないのにこのままでは学力が遅れてしまう。だから学びを保障するために使わせてあげなくちゃいけないね、と僕たちは話していたところでした」と言ってくださったんです。事例さえあれば学校も積極的に動いてくれるんだな、と感じました。
野中 本人や親が事例を探したり努力して自分の配慮を獲得するというのは当然のことなんだけれど、やっぱり限界がありますよね。どんな選択肢があるのか、どんな可能性があるのか、本人たちにはわからないことが多い。だから菊田さんのお話のように、先生の方から「こういう方法があるよ」って教えてくださるのが理想だな、って思います。
武井 「お子さんにはこんなことがしてあげられますよ」って学校側が提示してくれたら、親も安心できるんですけど、今は親の方から配慮をお願いすることが多いですよね。
菊田 でもね、この間、うれしいことがあったんです。息子が卒業した中学校の先生が連絡をくださって、「僕のクラスに、どうも菊田くんみたいに読み書きに困難のある子がいるんです。僕、その子にパソコンを導入させたいんです」って。飛んでいって資料を見せたら、「やっぱりぼくはそうだと思った」っておっしゃって、さっそくその子にパソコンを使わせてみたそうなんです。そうしたら、びっくりするくらい書けたんですって。それで、「親御さんに説明したいから材料をください」って。
一同 すごーい!
菊田 それでお母さんを説得して、その生徒さんは、今、パソコンを導入しているんです。素敵でしょ?こんなふうに動いてくれる先生が最近、増えてきた気がします。
武井 私もそうだったんですが、「お子さんはディスレクシアです」って診断されたところで、次にどう動いたらいいのか全然わからないんですよね。「じゃ、どうしたらいいの?」って。
菊田 子どもに障害があるということで親はまず動揺します。この子は障害と共に生きていくんだ、その現実を受け入れるステップはものすごく大きくて、親の気持ちが振り回されてしまう。そして悩んでいる間に、子どもの本質的な学びからどんどん離れてしまう。でも、親は動揺するものだからそれは置いておいて、子どもの学びだけは学校教育で常に保障してほしいんです。
武井 そうですね、黒板を写している間に先生の説明が終わってしまうとかね。親は不安になる。
野中 最初、診断されたときは本当に何もわからないんですよね。そんな苦しいときに、同じような問題を抱える先輩たちがどう取り組んできたか、その事例に触れることができれば、それがきっかけになって次のステップへの光が見えたりする。私たちのデータベースをそんなふうに役立ててもらえたらいいな。
菊田 事例を見ると、たくさんの子どもたちが支援を受けることで学びを取り戻して、そして豊かな人生を取り戻していることがわかります。本質の学びさえ保障できたら世の中が面白くなるという子がいっぱいいるんです。だから、今は苦しくても、学びを取り戻すことでみんなと同じ豊かな人生を享受できるんだということを、悩んでいる人に知ってもらいたい。そして、勇気を出して挑戦してほしい。それがこのデータベースの役割であり、私たちの思いでもあります。大切なのは生きる力を育てるための勉強を積み上げていくこと。障害の有る無しに関係なく、子どもの可能性に対して大人は枠をはめがちだけれど、そこは天井知らずで夢を描かせてあげたい。子どもたちの力を伸ばしてあげたいですね。
PART3に続きます。
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