【1】マネジメントメッセージ
一般社団法人読み書き配慮
代表理事 菊田史子
「未曾有の社会を生き抜ける力を子供達に。2021-2022」
例え読み書き困難を抱えていたとしても、子供たちに確かにつけてやりたい力があります。それは、広く情報を吸収し自分なりに思考し判断する力です。
2022年春、社会がコロナ禍の閉塞からようやく立ち上がり始めようとした矢先、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発しました。世界の安全保障の枠組みは一瞬にして幻となり、代わりに人々はwebを通じて戦争に参画できることに気がつきました。年齢を超え国家の枠組みさえ超えて、リビングから簡単に資金供与やサイバー攻撃という形で戦争に加担することができます。一方でwebという世界はフェイクニュースや陰謀説が跋扈する恐ろしい世界でもあります。何が本当で、何を目指していくべきか。私たちはすでに、過去に類を見ないほど個人の思考力や判断力が問われる時代の中にあります。子供たちに確かな思考力や判断力を育む必要性は火急のものとして重みを増してきています。まさに教育の原点に立ち返って子供達それぞれの学びを保障してやらなければなりません。
読み書きに困難があっても子供たちが確かな学びを手にするために立ち上げた読み書き配慮は、設立(2018年7月6日)からまもなく4年が経過します。活動を継続する中で、私たちは読み書き困難を取り巻く課題を整理し、解決に必要な社会の機能は何かを検討し続けてきました。それは実にシンプルな3つの機能として示すことができます。
❶読み書き困難が一般に知られ発見しやすいこと
❷検査が手軽に受けられること
❸配慮の方法が知られていること
必要を求めて展開してきた4年間の取り組みは、この3つの社会的な機能の醸成に寄与するものでもあります。保護者向けセミナーや教員研修は読み書き困難の認知が広まり発見につながりやすい環境を醸成するものです(❶)。なんらかの形で読み書き配慮が関わるセミナーや講演会に参加された方は2021年度だけでも3,500名程になります。NHK・NHK 厚生文化事業団をはじめ朝日新聞・日本版ハフポストなどメディアへの協力はさらに広い範囲に読み書き困難の認知を広げる効果をあげています。Eテレ『ハートネットT V”書けない僕”と母が歩んだ道』はアンコール放送に加え、NHK厚生文化事業団の福祉ビデオにも登録され、無料での貸し出しも始まりました。先般の中教審答申(2021年4月26日)が令和の日本型教育として謳う「個別最適な学び」や、学校で1人1台PCを配布する「GIGAスクール」への社会の関心は、読み書きに困難があってもICTを利用すれば個別最適な学びが叶う読み書き困難の子供達への注目にもつながっているでしょう。
さらに検査が手軽に受けられる環境を作るために(❷)、私たちは2021年春より「心理士による読み書き検査」を開始しました。検査希望者はメディアによる読み書き困難の情報の普及に伴って増加傾向にあります。さらに「河野俊寛URAWSS講習」は検査が受けやすい環境を全国に醸成するための一助を担っていると考えています。2022年はさらに検査者を増やす取り組みを強化して参ります。
そして配慮の方法の普及(❸)のために構築しているのが私たちの主軸事業である配慮データベース「あるよストーリーバンク」です。2021年度、私たちはこのデータバンクでわかってきた好事例に共通する要素をもとに、さらに取り組みを進化させました。子供たちに直接配慮の方法を教え、勇気を育む『読み書き苦手な子供のスクールKIKUTA(機器も駆使して楽しく学ぶ)』です。
このKIKUTAでは、読み書き困難のある学生も入り混じるチューターをふんだんに起用しロールモデルとすることで、子供たちの学ぶ意欲を刺激します。学びの楽しさとともにICTの使い方を伝授し、困難に向き合う苦しさを仲間と分かち合い、共に解決の方法を考え、一歩を踏み出す勇気を育てます。参加した子供達は全9回を通して「自分の人生をどう主体的に生きるか」を自らに問いかけ苦悶した末に、目覚ましい成長を遂げていきます。「ここに来ればなんとかなると思え!」と後進にエールを送る1期生のメッセージは印象的です。好事例が次の事例を生み出す配慮データバンクが、新たな価値を生み出し始めました。
さて、2022年度も読み書き配慮はさらなる歩みを進めます。学校で読み書き困難と戦う子供をひとりで放ってはおけません。前述の社会的機能を全国各地に創出するために、私たちのこのビジョンに賛同し理解者や検査者としてその手を貸してくださる方々を求めています。そのお力を借りながら、ワンチームとなって読み書き困難の子供たちを支えて参りたいと思います。
前へ前へ、さらに進み続ける読み書き配慮に、2022年度も引き続きご期待ください。
一般社団法人読み書き配慮
代表理事 菊田 史子
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【2】事業の状況
KIKUTA以外の事業に関しては下記の通りです。
(1) あるよ相談
本個別相談事業である「あるよ相談」ですが、徐々に相談件数が増え、一時1か月近くお待ち頂く状況になりました。
(2) 講習会
URAWSS IIは代表的な読み書き検査方法ですが、当法人では、この検査方法を開発された河野俊寛先生ご自身による講習会を今年度は5回開催しました。
また11月には、宇野彰先生をお招きし、学習障害についての講習会を開催しました。
昨年度に引き続き、動画配信による当事者の声を伝える活動や、合理的配慮の制度に関する知識を普及させるためのセミナーも随時開催しました。
(3) 講演会
本年度も菊田理事による教員研修を、新宿区、目黒区と北区で実施しました。また埼玉県上尾市でも講座の講師をつとめました。12月には静岡医師会の主催で教師向け講演会に登壇しました。
【3】当法人の状況
1. 財政の状況
累計損失額は770万円であり、引き続き財政状態の改善に努めて参ります。
2. 登録会員・SNSフォロワーの状況
【4】当法人の事業体制と運営状況
当法人の本年度における事業体制と運営状況につき、以下の通りご報告します。
1. 業務の適正を確保するための体制と運用状況
(1) 業務の適正を確保するための体制
当法人の理事の執務が法令及び定款に適合するため、また業務の適正を確保するための体制は以下の通りです。
・ 理事会は、法令、定款、社員総会決議に従い、経営に関する重要事項を決定すると共に、理事の職務執行を監督しています。
・ 代表理事は、定期的に、自己の職務の執行状況を理事会に報告しています。
・ 社内規定を整備し、恣意性を排除した上で、コンプライアンスに則り、当法人を運営しています。
・ 監事は、重要会議へ出席し、理事から必要に応じて報告を受け、監査の職務の実行性を確保しています。
(2) 業務の運用状況
当期の業務の適正を確保するための体制の運用状況は以下の通りです。
・ 本年度は理事会を7回開催し、代表理事が業務執行の状況を理事会に報告しました。
・ 法令や個人情報保護に関する社内規定に則り、情報を管理・整備しています。
・ 実開催のセミナー等ではコロナウィルス感染状況に対応し、安全・衛生面での対策を施しました。
・ 監事はすべての理事会に出席し、理事の職務状況を聴取し、関係資料を閲覧しました。
2. 役員に関する事項
2022年3月31日現在
氏名 役職
菊田 史子 代表理事
河野 俊寛 理事
武井 夏野 理事
武井 典明 監事
尚、補足すべき重要な事項はありませんので、附属明細書は作成していません。
以上