一般社団法人読み書き配慮 代表理事
苦悶の時を乗り越え未来へ繋ぐ。2020-2021
コロナ禍の真っ只中で新たな年度へのバトンが渡されました。
2020年の苦悶の中で紡ぎ出してきた事業は、
新たな展開としてつながりを見せはじめました。
社会の変化に迫られスタートさせた配信事業は、
コロナ禍に閉ざされた人々ばかりでなく、
教員研修として地方の学校につながり始めました。
事務局業務を受託した「アジア太平洋ディスレクシアフォーラム」では、
大規模な配信で日本と世界各国とをつなげます。
研究者はもとより、報道機関の技術チームなど、
「読み書き困難」という社会課題を通して、
読み書き配慮がつながってきた人たちと共に
奮闘した成果となるでしょう。
読み書き検査「河野俊寛URAWSS講習」は
オンラインのみ2日間の講習でしたが、
100%「満足」という驚異的な数字で
特別支援教育士や心理士、言語聴覚士の間で
つながりを拡げています。
読み書き困難を支える実務的支援者として学校や子供たちへ
更につながって行く期待を感じています。
そして2021年度、読み書き配慮は満を持してお子様と
直接つながるプログラムを始めます。
読み書き配慮を介して学校・学術・支援・家庭、そしてお子様がつながり、
一人ひとりに個別最適な教育が生み出される未来へ。
前へ前へと歩みを進める読み書き配慮に、引き続きご期待ください。
スマホでご覧になる場合はコチラのPDFで
私たちの活動の原点は、わが子に読み書きが困難な障害に起因する問題があっても、その解決の糸口が見つからなかったことにあります。そこから、問題の解決事例を共有するためのデータベース「あるよストーリーバンク」の構築が始まりました。そしてこの解決と共有を具現化するため、私たちは、解決すべき問題の所在を明らかにするための講演会や、解決につながる情報を共有するセミナーを開催し、個々の事例に具体的に対処する方法を提案する相談事業を行ってきました。これが私たちの事業の基本モデルです。
しかしはるか以前から、さまざまな方面の方々が、読み書きが困難な障害に取り組んできています。「あるよセレクト」では、こうした方々へのインタビューを通して、その活動や思いをご紹介してきました。私たちはそれにとどまらず、(図に示すように)自らの立ち位置を車輪のハブ(軸)に見立て、各方面に能動的に働きかけてきました。その結果、保護者と学校とを結びつけることはもちろん、当事者と報道機関、大学と心理士との橋渡しといった様々な関係構築のお手伝いすることができました。こうした有機的な結びつきが、子供たちの問題解決につながる道を大きく広げると確信しています。これがもう一つの事業モデルです。今年度は私たちのハブ機能が拡充した年でもありました。以下に、これまでの既存事業に加え、新規事業についてご説明をして参ります。
1. 配信事業の立ち上げ
本年度は突然のコロナ禍で、セミナーやシンポジウムといった従来の活動を実施するこ とが難しくなりました。そこで私たちは急遽YouTubeで「読み書きチャンネル」を立ち上げ、コンテンツをライブ配信やビデオ編集でお届けする企画を始めました。地方や海外にお住いの方々には好評で、コロナ禍後も本企画は続けて行く予定です。また幅広い情報発信の次なる手段として、代表の菊田が自らの子育てに関する本を出版しました。
従来の事業についての詳細は「【5】基本事業の状況」でご説明します。
2. 新たな事業モデル
(1) 読み書き検査講習会の実施
金沢星稜大学河野先生による、URAWSS(読み書き検査)講習を実施しました。読み書きに困難があっても、困難さを数値化することは、当事者が配慮を訴求する上で不可欠ですが、検査の担い手不足が問題でした。今回は心理士等の先生方に向けた専門的な内容の講習会でしたが、数多くのご参加を得て、大変好評でした。こちらも配信形式で海外を含む全国にお届けしました。今後私たちは、心理士の先生方と、読み書きに困難を抱える当事者とをつなぐ架け橋(ハブ)としての役割も担って参ります。
(2) SDGs事業者認定
内閣府よりお声掛けを頂き、「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」の会員となりました。今後はプラットフォーム上の関係者との結びつきを強化し、新たなハブとしての役割を模索して行きます。またこれを機に、2021年3月にはSDGsを主題としたNHKハートフォーラムに菊田親子が招かれ、柳田邦男・本田秀夫先生らと共演し、千人近い参加を得ました。
(3) NPOとの関係構築
NPOエッジ様が主催し2021年5月に岡山県で開催される「アジア太平洋ディスレクシアフォーラム(”APDF”)」の事務局業務を請け負いました。当該業務を通じて関係各所との接点が広がりつつあり、新たな提携機会の契機となりました。また、フォーラム当日は、代表菊田が司会を務め、シンポジウムに菊田親子と田中理事が登壇するため、当法人のプレゼンスが向上する機会にもなります。
1. 財政の状況
本年度はコロナ禍の中にありながら、たいへんありがたいことに、有料会員様の数は110名程に増え、引き続き個人会費収入に活動を支えていただいています。また住友商事グループのシステム会社SCSK様よりは、昨年度に続き、ご寄付を頂戴しております。
しかし当法人の人件費すらほとんど支給できていない状況は昨年同様で、データベース・システムの償却費を合わせた当期損失は375万円となりました。昨年度からの累計損失額は970万円となっており、事業の持続性を確保するためにも、財政状態の健全化は喫緊の課題です。
2. 登録会員・SNSフォロワーの状況
当法人にアカウントを登録されている方々の数は本年度中に1.5倍強増加し、1,020名にもなりました。メルマガ登録者数は1,146名にもなります。またSNSフォロワー数は、当期末にはFacebook 933、Instagram 122、Twitter 421、LINE 710、 Peatix 446となりました。
1. あるよストーリーバンク
昨年度に続き、読み書き等に困難を持つ子どもに関する事例の収集を続け、事例の数は176にまでなりました。事例を投稿してくださった方々には厚く御礼申し上げます。頂いた事例は、昨年度に制定した個人情報保護法に基づく社内規程(情報管理規程)に則り、慎重に扱っています。また、データベース・システムは引き続き安定して稼働しています。
2. あるよセレクト
配慮導入を実現してきた人たちは、配慮事例の中身もさりながら、その周辺情報にこそ配慮実現へのヒントが詰まっていることを知っています。
その周辺情報を余すところなく伝えるあるよセレクト。コロナ禍ではありましたが、毎月2回のペースで、当事者、教員、療育関係者、大学関係者や保護者の声をお届けして参りました。
本年度は、LDの若者たちから仲間に送るメッセージにはじまり、読み書き検査の方法や種類、大学受験秘話、小学校校長の柔軟な教育理念、高校受験秘話など、個人の口コミでは入手に限界のある周辺情報を、読み書き配慮が直接取材して伝えました。SNSの心理士のグループや教員グループでは「あるよセレクト」が有用な情報提供サイトとして度々話題になると伝わってきています。
3. セミナー・講演
(1) 合理的配慮セミナー
主に教員と保護者に対し、通常の学級における学習障害に対する合理的配慮への理解と配慮実現を目指すセミナーは当法人
では定番となりました。今年はリアル開催に加え、ライブ配信・ビデオ配信を6回開催し、参加者は合計93名でした。
(2) ビデオによるセミナー・シンポジウム配信
上記に加え、新たなシリーズとして、学習障害の当事者を中心とした動画シンポジウム企画を立ち上げ、初回は59名もの
参加を得ました。また他にも自主シンポジウムや高校入試への配慮についてのセミナーをライブ配信しました。
(3) 講演会
コロナ禍で主だった講演会がキャンセルとなる中、徐々にですが、世田谷区・新宿区・川崎市より小規模な研修会のお声
がけを頂きました。また2020年12月には静岡県助成事業として研修会で菊田代表が講師を務め、Web参加を含む118名が
参加しました。他にも都内NPOや星槎教育研究所からの依頼で講演会を合計8回実施しました。
4 .相談・支援事業
個別相談事業である「あるよ相談」ですが、本年度も学びを実現するための具体的な施策をお伝えすることに注力しました。ご相談内容への傾聴はもちろんですが、問題が「解決」することが何より重要です。多様なご相談内容でしたが、障害の程度、適切な配慮、学校との調整、家での学び方などを、個別具体的にお伝えしました。このため、本年度は複数回相談に来られる方が増えてきました。最初の相談で気づきを得て現状を振り返り、問題点が明らかになり、再度相談に来られるというパターンです。また、基本的なことですが、わが子が読み書き障害なのかという根本的な問いをお持ち込みになる相談者が増え、読み書き困難という障害に対する社会認知度が向上したように感じられます。この結果、今年度の相談件数は飛躍的に増加し、昨年度比約1.5倍になりました。
また2020年7月はWebで有料会員様限定の交流会を実施し、皆さまより大変貴重なご意見を頂きました。
当法人の本年度における事業体制と運営状況につき、以下の通りご報告します。
1. 業務の適正を確保するための体制と運用状況
(1) 業務の適正を確保するための体制
当法人の理事の執務が法令及び定款に適合するため、また業務の適正を確保するための体制は以下の通りです。
・ 理事会は、法令、定款、社員総会決議に従い、経営に関する重要事項を決定すると共に、理事の職務執行を監督しています。
・ 代表理事は、定期的に、自己の職務の執行状況を理事会に報告しています。
・ 社内規定を整備し、恣意性を排除した上で、コンプライアンスに則り、当法人を運営しています。
・ 監事は、重要会議へ出席し、理事から必要に応じて報告を受け、監査の職務の実行性を確保しています。
(2) 業務の運用状況
当期の業務の適正を確保するための体制の運用状況は以下の通りです。
・ 本年度は理事会を6回開催し、代表理事が業務執行の状況を理事会に報告しました。
・ 新たに制定された2件の社内規程を理事会で決議しました。
・ 法令や個人情報保護に関する社内規定に則り、情報を管理・整備しています。
・ 実開催のセミナー等ではコロナウィルス感染状況に対応し、安全・衛生面での対策を施しました。
・ 監事はすべての理事会に出席し、理事の職務状況を聴取し、関係資料を閲覧しました。
2. 役員に関する事項
2021年3月31日現在
氏名 | 役職 |
菊田史子 | 代表理事 |
田中 裕一 | 理事 |
武井 夏野 | 理事 |
武井 典明 | 監事 |
尚、補足すべき重要な事項はありませんので、附属明細書は作成していません。
以上