一般社団法人読み書き配慮は、
配慮事例と配慮に至るまでのストーリーを
拾い上げて光を当て、
「読み書きへの配慮は人生への支援である」
という配慮の価値を発信していきます。
その結果、読み書きの困難を抱える子ども達が、
学びのあらゆるステージで解決策を
当たり前に提供される社会を目指します。
あるよストーリーバンクをより強固に、より大きく。
時代に即した情報を、より受け取りやすく。
困難に立ち向かう子供たちと、大人たちが集えるハブを目指す。
読み書き配慮は2020年も前進します。
スマホでご覧になる場合はコチラのPDFで
当法人は、定款に定めるところにより、知的な遅れはないが、発達障害等に基づく読み書きの困難な方に対する理解の促進と配慮の普及を図るため、設立年度である平成30年度(昨年度)に続き、本年度もさまざまな施策を実行してきました。当法人の基幹事業である、配慮の事例解決(ストーリー)のデータバンクである「あるよストーリーバンク」は、平成31年2月21日より稼働し、本年度末までの14か月弱の間、公開された事例は137件となり、データベースとして充実してきています。
当法人の活動は、主に個人有料会員様よりのご支援に支えられており、本年度末時点で103名の方々にご登録を頂きました。下記に報告するセミナーとシンポジウムや講演会、相談・支援事業を通じた参加者の、そしてまたホームページ等を通じての、みなさまのご賛同とご寄付等のご支援に深く感謝しております。また、さわかみ投信株式会社様とSCSK株式会社様よりご支援・ご寄付をたまわっておりますことも、当法人の力強い支えとなっております。
今後とも引き続いてのご支援に感謝するとともに、当法人はESG事業者として、困難をかかえる当事者、保護者と教育関係者に対し、積極的に活動を続けて参ります。
上記のように、事業自体は順調に推移しているものの、当法人の本年度の決算は約550万円の赤字となりました。固定費とデータベースシステムの減価償却費が主たる要因であり、昨年度からの累計損失額は約600万円と財政状態は引き続きひっ迫した状況です。このため、800万円を超える借入金等の債務を返済できないどころか、当法人の活動に伴う、理事や事務局(総数5名)に対する人件費はもちろん、交通費すら支給できていません。事業の持続性を確保するためにも、財政状態の健全化は急務の課題です。
その一方で、組織運営は下記報告の通り、年度内で7回におよんだ理事会で事業戦略から自らの統治(ガバナンス)に至るまで議論を積み重ね、事務局を入れた毎週の在宅でのWEBベースの打ち合わせで活動の質を担保しています。また、法に則り内部統制上必要な社内諸規程を整備するなかで、貴重な個人情報を取り扱う事業者として、情報管理規程を定め、膨大な時間をかけて事例を一つ一つ丁寧に審査し、匿名加工情報の形にして公開しています。
代表理事以下、当法人の役員と事務局は、社会的意義を念頭に、コンプライアンスを遵守しつつ、着実かつ堅実に当法人を運営していることを、ここにご報告します。
下記の通り、理事会・社員総会を、新宿区の当法人事務所において開催しました。法令[1]に従い、各回の議事録を作成、出席者が記名・押印し、正本は事務所に保管しています。尚、社員総会前には監事が適切に監査を実施し、当法人の理事の運営状況と計算書類(決算書)に問題がないことを「監査報告書」にて確認しております。
1.令和元年6月1日(土) 本年度第1回理事会
議題 決議事項:
第一号議案 第1期事業報告及び計算書類並びに付属明細書承認の件
第二号議案 第1回社員総会の開催並びに社員総会の日時、場所及び目的の件
第三号議案 社員総会招集者及び議長並びに理事会議長の順位定めの件
第四号議案 寄付金等取扱規程及び事務局規程の制定並びに事務局長選任の件
報告事項:業務執行状況
2.令和元年6月13日(木) 定時社員総会
議題 報告事項:第1期の事業報告書の報告の件
決議事項:
第一号議案 第1期貸借対照表及び損益計算書並びに附属明細書の承認の件
第二号議案 平成31年度事業計画及び収支予算の承認の件
第三号議案 役員報酬等の件
3.令和元年7月13日(土) 本年度第2回理事会
議題 報告事項:業務執行状況
4.令和元年9月3日(火) 本年度第3回理事会
議題 報告事項:業務執行状況
5.令和元年10月27日(日) 本年度第4回理事会
議題 報告事項:業務執行状況
6.令和元年12月13日(金) 本年度第5回理事会
議題 決議事項:
第一号議案 情報管理規程、個人情報管理規則及び個人情報保護基準制定の件
報告事項:業務執行状況
7.令和2年2月16日(日) 本年度第6回理事会
議題 報告事項:業務執行状況
8.令和2年3月31日(火) 本年度第7回理事会
議題 決議事項:
第一号議案 令和2年度事業計画及び収支予算の承認の件
[1] 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」第57条第1項並びに第92条第3項
昨年度末に策定した令和元年度事業計画で定めた諸施策の実行状況は下記の通りです。
(1)昨年度に続き、読み書き等に困難を持つ子どもに関する事例の収集を続けました。頂いた事例は、本年度に制定した個人情報保護法に基づく社内規程(情報管理規程)に則り、慎重に扱っています。
(2)取集した配慮事例を公開可能な形にするべく、複数の理事で協議の上、事例を編集しました。また、公開事例の質を高めるため、収集した事例内容の確認作業を入念に行い、編集作業に膨大な時間をかけました。
(3) システムは引き続き安定して稼働しています。
(4) 本年度は、さまざまな公開の場において、参加者に事例入力の方法をお伝えしました。
(5) 国内外からデータベースの更なる活用法についての提案が寄せられています。当法人は、個人情報保護の観点から、慎重にこれらご提案を検討中です。
あるよストーリーバンクを中心とし、下記の通りさまざまな事業を展開しました。データベースを単に提供するプロダクトアウトの発想に留まらず、マーケットインの発想で、社会に対して読み書きの困難な状況への理解を促し、解決を提供すべきと考えたからです。ちなみに「あるよ」とは、読み書きが困難な障害のある子を持つ私たちが、過去、こうした子どもに関する事例がどこにもなく、立ちすくんでしまった経験から、ここに事例が「あるよ」と呼びかけることによって、同様の困難を抱えている当事者と保護者、さらに教育関係者に、解決の機会を与えたいとの願いの表れです。
読み書きが困難な障害を取り巻く、さまざまな方面の関係者(当事者、教員、文科省関係者、学会関係者、研究者、関連企業、大学教授)へのインタビュー記事「あるよセレクト」を月3回のペースで公開してきました。あるよストーリーバンクは配慮の具体例として当事者と保護者が主役ですが、あるよセレクトは、当事者や保護者のみならず、障害に関わる多方面の関係者にインタビューを試みることで、それぞれの意図や思いを紹介し、障害に対する考え方や障害を克服する方法論に目を向けたものです。本企画には海外からも関心が寄せられています。
読み書きが困難な障害に関心を持つ方に向けたメール配信「あるよメルマガ」を拡充し、本年度は13本配信しました。メルマガに登録頂いた方の数は682名に登ります。メルマガに掲載中の「あるよコラム」の内容が興味を引くようで、開封率も高い状況です。
読み書きが困難な子どもの保護者よりの相談事業「あるよ相談」ですが、直近2020年1~3月期の申込件数が急増しており、相談事業への認知度の高まりを感じています。また相談は、全国を対象にWEBベースや電話でも受け付けており、3月以降の外出が難しい時期には効果的でした。
他方で、個別相談ではなく、複数名の参加によるラウンジ形式で、保護者に配慮を実現するコツを伝授する「あるよラウンジ」を2回開催し、10名の方々に参加頂きました。これに先立つ形で会員様の交流を目的とした「あるよミートアップ」でも7名の方々に参加頂いており、相談・支援事業の重要さを再認識しました。
読み書きに困難を持つ子どもに必要なセルフ・アドボカシー(他者に対して配慮等を訴求する)には欠かせないコミュニケーション能力を高めることを目的として、本年度より支援事業としての新企画であるTRPG(table talk role playing game)を開催しました。
読み書きに困難のある子どもは、学校等で適切な配慮を受けていないことが一因で、他者を疑い、その結果、適切なコミュニケーションをとることが不得意になりがちです。TRPGでは、こうした子どもが本来持つ物事への興味と関心を引き出すことにより、本人たちに気付きと喜び、将来への自信を与えます。
今回参加した6人の子どもたちは、参加前は言葉少なげでしたが、5日間のセッションに参加するにつれ、互いにコミュニケーションを積極的に取るようになり、本来の年齢の子ども特有の明るさと笑顔に包まれるようになりました。引率されていた保護者の方々も、我が子の変化に大変驚かれていました。
本年度は、セミナーやシンポジウムの開催や参加、また教員を中心とした研修会等で講演を行うことを通じ、教員、当事者、保護者等との交流を拡大しました。
主に教員と保護者に対し、通常の学級における学習障害に対する合理的配慮への理解と配慮実現を目指すセミナーを8回開催し、参加者は合計123名にもなりました。
1) 設立シンポジウム(当法人主催)
明星大学教授の小貫先生と世田谷区桜丘校長の西郷先生をパネリストとしてお呼びし、3時間半に及ぶシンポジウムには、70名の参加がありました。これを契機に両先生からは当法人の活動にご賛同とお力添えを頂いています。尚、さわかみ投信株式会社様より、無償で会場をご提供頂きました。
2) 未来の先生展2019
西郷先生をお招きして開催。会場には150名と大勢の方々に参加頂きました。
3) 一般社団法人日本LD学会第28回大会
パシフィコで開催された4,000名弱が参加した大規模な大会で、当法人は自主シンポジウムを開催し、大会企画シンポジウムにも参加しました。両シンポジウムへの参加者は440名を超え、キャンセル待ちが発生するほど盛況でした。
4) 自主シンポジウム(当法人主催)
明治大学で開催した小貫先生をお招きしてのシンポジウムは、有料にもかかわらず71名の方々にご参加頂きました。
5) 【中止】春のシンポジウム(当法人・SLDガーディアンズ共催)
3月に金沢星稜大学河野教授をお招きしてのシンポジウムは、残念ながらコロナ禍の影響で中止となりました。
教育関係機関を中心に、各所から講演の依頼がありました。招へい元のお名前を下記します(敬称略):
(株)モリサワ、千葉市教育委員会事務局(有志の方々)、宝塚市教育委員会、江東区教育委員会、新宿区ロータリークラブ、北区西浮間小学校巡回拠点にしうき、杉並区PTA連合協議会。
(1) ホームページ上の「スタッフブログ」で、当法人の現在の活動状況をお伝えしました。当法人にアカウントを登録されている方々の数は657名様にもなりました。
(2) SNSで当法人の活動の社会的周知を図ってきました。この結果、フォロワーの数は毎月のように増加し、当期末にはFacebook687、Instagram 56、Twitter 120、LINE 535となりました。
(3)8月に代表理事の菊田が「NHKハートフォーラム」にパネリストとして登壇しました。
(4) 当法人の活動紹介は、朝日新聞様にもご協力を頂いており、朝刊(2019年8月4日)にて、「1日で学ぶ合理的配慮」セミナーの告知をして頂きました。
(5) SCSK株式会社様に多大なるご協力を頂き、SNSの活用方法、ホームページ向上のためのデザインやアイデアを数多く頂戴しました。
(1) セミナーやシンポジウムで、数多くの参加者の方々からご寄付を賜りました。なかでも数名の個人の方と、とりわけSCSK株式会社様からは多額の寄付金を頂戴しました。
(2) 個人有料会員様は、当期首に目標としていた120名には及びませんでしたが、100名という節目を超えることができました。
(3) 相談・支援事業での収益が増えてきました。
(4) 本年度は特定の組織や団体との協業はありませんでした。
コロナ禍の影響で、来年度の活動が見通せない状況ですが、対処すべき課題は下記です。
1.シンポジウムの開催・参加は2か月に一度程度の頻度を目指すこと。
2.合理的配慮セミナーは東京で開催するが、状況に応じて関西でも開催を検討する。
3.東京中心の活動から地方にも展開する。
4.これまで構築してきた関係者・協力者とのネットワークを強化し、協業機会を深掘りする。
5.企業、大学、医師との新たな提携機会を広げる。
6.データベースのより有機的な活用方法を模索する。
7.当法人の活動を、社会的に広く認知してもらうため、出版事業を検討する。
8.SCSK株式会社様よりご提案頂いた内容でホームページを改修し、当法人へのよりよい理解に資する。
9.財政状態を少しでも健全化し、当法人の活動継続を担保して行く。
10.イベントの主催者となる場合は、行政の指導のもと、開催場所の換気の励行等、コロナ禍対策に留意する。
2020年3月31日現在
氏名 | 役職 |
菊田 史子 | 代表理事 |
田中 裕一 | 理事 |
武井 夏野 | 理事 |
武井 典明 | 監事 |
尚、補足すべき重要な事項はありませんので、附属明細書は作成していません。
以上