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小学校に入ってから必ず付いて回るのが、漢字の宿題だと思う。
書き順を一画ずつ書くという宿題が大変だった、という話をよく聞くが、幸いにもその宿題にはあたったことがない。大抵は、「この漢字をノートに何回書く」といった宿題がほとんどだった。
漢字というと、苦い思い出しかない。何が大変だったのかと思い返してみると、宿題の内容より、一番は宿題に取り組まない息子との格闘だったかもしれない。
とにかくやりたがらないものをやらせるのは、本当に骨が折れる。
思えば小学校に入学してから毎日、どうやったらすんなり宿題に取り組んでくれるかというお題と向き合ってきた感じだ。
それでも、小学校の低学年の頃はよかった。
ウルトラマンになりきって、3分間がんばろう!とやっていたこともあった。
宿題も少ないし、ノートのマス目も大きいので、褒めたり驚いたりしたら、息子は嬉しそうにがんばった。
それでも書いて覚えはしなかったから、カルタで覚えたり、背中に書いて漢字を当てさせたり、尻文字(お尻で漢字をかく)漢字クイズなんかをすると、喜んでいた。
シャレにならなくなったのは、小4のころからか。先生からも一人だけドリルが終わっていないと指摘を受けた。
何回も何回も書いても、書かせても覚えられないことに、私は薄々気がついていた。
小3の時の漢字テストでバツしかなかったテストに、先生のコメントが書いてあった。
「くやしいと思うことが第一歩です。」
私はこのテストを捨てられず、実は今でも持っている。
当時、くやしいと思っていたのは、私だったのかもしれない。
だから、子どもには、がんばるだけがんばらせてきてしまった。
当の本人は、そのコメントを読めたのか、読んだのかすらわからない。気にもとめていなかったのだから、たぶん読んでもいないのだろう。読めなくて無用に傷つかずに済んだのなら、良かったと思う。
それでも、私は自分の中でたぶん踏ん切りがつかず、小5になってもがんばらせていた。
何かの本に「漢字は70回書けば、誰でも覚えられる」と書いてあった。確かに自分の名前だけは書けているなと思い、夏休みに出された50問漢字を10問ずつに分けて毎日毎日休まず取り組ませてみた。
休み明けのテストでは、みごと98点だった。本人も嬉しそうだった。
「あれ?やればできるの?」「やっぱりディスレクシアじゃないのかも?」と思った。
それから一週間も経たないうちに、その50問テストをもう一度やらせてみた。
ひどいものだった。
あんなにがんばっていた夏休みの時間が、一瞬で消えてしまったような気持ちになった。
この日を境に、私は書くようには言わなくなった。
今思うと、もう少し学校の先生に相談してみてもよかったと思う。
イギリスに赴任中も、私は毎日遅くまで子供に宿題をがんばらせていた。その学校は毎日3、4ページのプリントの宿題が出ていた。
ある日、息子は睡眠不足で疲れがたまって口内炎ができたことがあった。
その時、ランチを食べない息子の様子に気づいたイギリス人の担任の先生が、帰りがけに私を呼び止めた。
「(お子さん)疲れているみたいだけど、いつも何時に寝ているの?」
「9時までには寝かせたいけれど、宿題が終わらなくて10時、11時になっちゃう時もある。」と話すと、もう、目をまんまるくして、こう言った。
「そんなにやらさなくていいから。30分だけやれば十分よ。30分でできたところまででいいから。」
「ただ、やる順番は、5問の英単語からはじめて、数学、英語、理科、地理、歴史にしてね。」
私もちょっとびっくりした。
正直「えっ、いいの?」という気持ちだった。
でも、おかげで、子どもの取り組みが早くなり、私も楽になった記憶がある。
思えばこれが最初の配慮だったかもしれない。
学び方は他にもあるはず。
いろいろな事例を手がかりにしてみてほしい。
(武井 夏野)
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